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「おいガキ、さっさとしろ!!まだ汚れてんじゃねーか!!!」

『はいはーい、今やります!』

デッキブラシを持ち急いで走る。

なんだよぉ…だいだいこの場所はアンタが掃除する所じゃん…あだっ!』

「あぁ?文句あんのかテメェ…さっさとしやがれ新入りが!次はビール瓶で殴っぞ」

「ガハハハ、小娘相手に厳しいねェ」

「バーカ、男だろうが女だろうが餓鬼だろうが関係ねェよ。新入りは先輩の言う事聞いとけばいいんだよ」

そう言ってビールを煽り、そういやこの前行った町にいい女がいてよォ…なんて話し始めた自称先輩達を睨み不本意な仕事を再開する。






私が海軍に入隊した理由…数ヶ月前に生まれ育った町を海賊に襲撃され町は全滅。
大好きな父ちゃんや母ちゃんも目の前で殺された。私もナイフでお腹を刺されたが急所は外れていたらしく目の前に広がる光景を動けないままただ眺める事しかできなかった。
次第に意識が薄れていくなかで最後に見たのは背中に大きく書かれた“正義”の二文字だった。

後から手当てしてくれた人の話によると、瀕死の私を担いで軍艦に連れて帰り手当てを頼んだのはボルサリーノ大将だという。

傷も癒え軍艦から降りるよう言われたが、私はここに置いてくれと頼んだ。もちろん海軍に入隊しいつかあの海賊達に復讐してやろうと考えている。
それよりも、生きるチャンスを与えてくれたボルサリーノ大将にこの命を捧げようと私は誓ったのだ。

だから、私は早く強くなりたい。いや、なるんだ!!





意気込んではみたものの、まあ現実は厳しいもんで、新入りはだだっ広い甲板の掃除やら積み荷運びやら皿洗いやら次から次へと山のように仕事がある。
しかもコイツ等みたいに自分の仕事を押し付けてくる奴もいるんだからさ、休憩どころか睡眠時間もあんまりない。

フン、今に強くなってアンタ達なんて顎でこき使ってやるんだから!

なーんて今のままじゃいつになるか分からない。ここにきて数ヶ月が経ったけれど、戦闘訓練なんて参加もさせてもらっていない。
…あれ?もしかして私って海兵じゃなくて小間使いかなんかと思われちゃってんの?

うーんと唸っていると背後に気配を感じ振り返ると、下っ端の海兵は滅多に会うことができない二人の姿が現れた。
カッカッカッと軽快な靴音を鳴らすボルサリーノ大将とのっしのっしと戦桃丸さんがこっちに歩いてくる。

え?なんで?確かに軍艦に乗ってなかった…てかここ海の上なんですけど!

慌てて敬礼すると、それに気づいた先輩達も持ってたビールを隠し敬礼した。


「テメェ等ちゃんと仕事してるのか?…酒の臭いがするが」

と戦桃丸さんは目を細め先輩達を見据え持ってた鉞(まさかり)をブンブン楽しそうに回しながら彼等に近づいて行く。

そんな光景を傍観していたら、「おい」と言われボルサリーノ大将に視線を戻すとフワッと私の首に掛けられた物。それは海軍のマークをあしらった金のペンダント。

「そういやよォ〜今日誕生日だっただろォ〜?わっしからのプレゼント」

自分でも忘れていた誕生日を大将が覚えてくれてたなんて…思わず目頭が熱くなる。

『あ、りがとう、ございま、す』

言葉が上手くでない。


「あ、それからねェ〜明日から銃の訓練に参加していいぞォ〜」

…急な展開に頭がまわらない。

「ま、早くわっしの役に立てるように頑張ってくれよぉ〜コハル」

『は、はははい!頑張りますっ!必ずや大将のお役に立てるよう精進します!』

そう言って敬礼する私を見る大将のサングラスの奥の眼は優しくて何だか父ちゃんの眼に似ていて…涙が溢れてきた。

「じゃあなァ〜」と手をひらひらとさせボルサリーノ大将の体がまばゆく輝いたかと思うと、もうその姿は無かった。ただ彼の愛用しているであろう香水の香りだけを残して。

未だ流れ出る涙を拭っていると、ふいに頭を掴まれガシガシと乱暴に撫でられた。視線をその手に向けると戦桃丸さんだった。

ニタニタと笑いながら「もっと食って大きくならねェと強くなんかならねェぞ」と言われた。

『うぅ…戦桃丸さんよりも強くなってみせます!』

と頬を膨らまし拗ねた私を見て、一瞬驚いた表情をし

「フン、精々頑張るこった」

と言い去っていく大きな目標の姿を見つめていた。




貰ったペンダントを握りしめ空を見上げる。
雲一つない青空とこれからの私の未来に心が踊った。



END


     

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