あれから三年が経ち・・・
私は今、大江戸の歌舞伎町に住み、寺子屋で臨時の教員をしている。
今のところ、命を狙われるようなことはない。
護衛の二人は付かず離れずで、護ってくれている。
夜、いつものように窓から月を眺めていると向かいの家の住人が酔っぱらって帰ってきた。
その男は、いつもダルそうにしていて、営んでいる万事屋も開店休業状態だ。
ただ、彼の銀髪が月の光をうけ、綺麗に輝いているのを見るのが好きだった。
『あ〜呑み過ぎたなぁ…明日も二日酔いかよ』
うん?向かいの娘、今日も月眺めてんな。
月の光に照らされた娘はとても美しかった。
ただ、いつも哀しそうに…今にも泣きだしそうな顔で。
『笑った顔がみてぇな』
いつの間にか、その娘が気になっていた。
その娘は、晴れた日は自宅の窓から月や星を眺めていた。
雨の日は、お登勢の店で酒を嗜む程度、呑んでいるらしい。
お登勢が言うには、話しかければニコニコとしているが、決して自分からは人と話さない。
…ただいつも哀しそうにみえる、と。
『気持ち悪ィ‥。頭も痛てぇよ。』
『銀ちゃん!今日朝ご飯の当番アルヨ!!早く作るネ!』
『うっせーな!頭痛てぇんだから大声だすんじゃねぇよ。ババァのとこ行って何か食わしてもらってこいよ。』
『チッ。マダオが。』
『先生、さようなら〜』
『はーい、さようなら。気を付けて帰ってね』
生徒を見送っていると、雨がポツポツと降ってきた。
『…月みれないなぁ。お登勢さんとこ行こっかなぁ』
一人呟いた。
『雨かよ…ババアとこに行くか』
あの娘が来ているかもしれない。
そう思ったら居ても立ってもいられなくなりお登勢の店に急いだ。
いた…。やっぱり来ていた。
カウンターの隅で呑んでいる。
なんだか嬉しくて自然と笑みがこぼれていたらしく
『何だい銀時…ニヤニヤして気持ち悪い!』
『っ!何でもねぇよ!!』
『それはそうと銀時、今月の家賃まだもらってないよ!早く払いな!!』
『……いいから酒くれ』
『アホの坂田さーん、酒のむ金あんなら家賃払えよ!クソがっ!!』
そんな会話をしながら娘の方をチラチラと見ていた。