『実戦では、こういうのもあるんだよ。道場で稽古しているんじゃねェ、相手を殺す為に戦っているんだぜ?』
**は口を拭いながら立ち上がる。
『ありがとう、勉強になった。』
冷酷な眼差しを凱に向け笑う。
**を纏っていた空気が変わった。
周りの者が思わず身震いする程に冷たく、重く…。
凱が不敵な笑みを浮かべ、斬りかかる。
**はそれを刀で防いだ。
が、ジリジリと上から押される。
**が凱の腹部を蹴り上げ、後退した瞬間下から上に斬りつけた。
凱の腹から胸にかけ浅く切れ、血が滴り落ちた。
『…なかなかやるじゃねェか』
『フフ、これでいいんでしょ?』
その後も、押したり押されたりの斬り合いが続く。
力でねじ伏せようとする凱の剣に対し、技で隙を突き、的確に急所を狙う**の剣。
凱は**の空気を裂くような一閃をよける。
**もまた、凱の太刀をかわす。
静寂の中で、刀がぶつかる音だけが響いている。
**の初太刀を凱が避けるが、二の太刀、三の太刀と間髪いれず凱に襲い掛かる。
反撃の隙を与えない。
『クッ!』
凱がよろけた瞬間、切先が凱の首筋に当てられる。
『もう終わり?もっと遊びましょうよ』
と口元に笑みを浮かべ呟く。
…愉しい。
この男との戦いは。
『アイツ、愉しんでいるな‥。』
『えっ?』
『表情を見てみろ。笑っているだろ。…アイツに剣で敵う者はいなかった。いつも物足りなそうにしていた。輿石凱は強い…そんな相手と戦うのは楽しいのだろう…。否、今戦っているのは…心に棲みつく鬼…なのか?』
確かに笑っている。凱との斬り合いを愉しんでる。明らかにいつもの**ではない。
一瞬、俺や高杉のように修羅になるのかと不安になる。
どの位時間が経ったのだろう。
次第に、二人にも疲れが見え始めていた。
二人は手を止め鞘に刀を収めた。
『…そろそろ頃合いだな。』
『‥そうね。』
間合いを外し、**と凱は自身の妖刀に手をかけた。
途端、二人の眼の色が変わった。
**の眼は、龍のように気高く、力強く。
凱の眼は、虎のように獰猛で、荒々しく。
張りつめた緊張の中、二人同時に間合いに飛び込んだ。
凱の切先が、**#の胸を狙う。
**は、身体の右半身をひねり左肩を斬られながらすぐさま凱の刀に自分の刀の峰を思いっきり叩き付ける。
『何!?』
ガキィィィ‥ン
甲高い金属音が響き、凱の白虎が二つに割れた。
凱にとどめを刺す。
凱の心臓めがけて青龍を突き刺す。
『グッ‥』
『チッ…』
肋骨が邪魔をして奥まで刺せない。
刺したまま刀の向きを横にし貫通させた。
……
……
凱は倒れ、動かなくなった。
『ハァ、ハァ…』
左肩からかなりの出血。だんだん顔色が悪くなっていく。
凱の元へ行く。
凱が死んでいるのを確認し、青龍を抜いた。
手拭を出し、凱の顔の血を綺麗に拭いてやる。
フラフラと歩き、倉庫のコンクリートの壁に青龍を叩きつけ真っ二つに折り、高杉に笑顔を見せそのまま倒れた。
『**!!!』
銀時達は叫び**の元へ駆け寄る。
**は、息苦しそうに青白い顔で笑った。
やっと自由を手にしたか。
**が俺に笑いかけている。俺も笑い返した。
『!!!来島!医者に手当の準備させろ!!』
『は・はい!』
**が倒れた‥。
コンテナから飛び降り**のもとへ。抱きかかえ、船に乗せようとする。
『高杉!**をどうするつもりだ!』
『船に医者を乗せている。早く治療してやらねェと、死んじまうだろ!』
『!!!』
『コイツは俺にとっても大事なんだ。死なせたくねェ』
『…絶対に死なすなよ!!**!俺達待ってるからな!ババァ達もお妙も長谷川さんも、お前の仲間が待ってるからな!早く治して戻ってこい!』
『ずっと待ってますからね!』
『早く来ないと、もう酢昆布あげないアルヨ!!』
**は、うっすら眼をあけ小さく頷いた。