数日後、ジャンプを読みながらダラダラしていると、玄関のチャイムが鳴る。

また、新聞かなんかの勧誘か?

『だーかーらー、新聞はいらねぇって言ってんだろ!』

玄関の戸を開けると、

『…新聞屋ではない』

と**の兄貴みたいな存在の柊という男が不機嫌そうに立っていた。

『わりぃ…』

『アンタ、**を知らないか?』

『**なら、新八の家に…』

『…そうか。今暇なら案内を願いたいのが…』

それが人に頼む言い方かよ!と思ったが、

『分かった』

という。



二人黙って歩いていたが、不意に話しかけられた。

『**は何をしているんだ?』

『稽古するって言ってたな』

『…稽古の最中に邪魔すると怒るんだ。子供の頃は一ヶ月も口を聞いてもらえなかったし、アイツの間合いに入ろうものなら竹刀を振り回された。護衛に付くって言った時は、俺と桃に<死ぬ覚悟はできているのか?>と刃を向けてきた』

『恐えぇな。』

『剣なんか持たなければ、あんなに強くなければ嫁の貰い手もあるだろうに…。こんな状況だと恋だ愛だと言っていられないか‥。他人を遠ざけるようにして生きているんだ。本当は辛くて寂しくて誰かに頼りたい時もあるだろうが、周りの人間を危険に巻き込まないよう、踏ん張って生きている。女としては可愛くないな。…アンタは**の事を仲間だと思ってくれているのか?』

『仲間・…とか解んねぇが、いつも笑っていて欲しいと思ってるよ』

『…そうか。少なからずアイツはアンタ達を大切に思っているみたいだ。アンタのところの子供達に気付かれないよう桃を護衛に付けている。アイツは尊敬に値する。だから俺達はアイツの背中を護る。笑顔は…アンタが護ってやってくれないか?』

『…俺も護ってやりてぇよ』

少し照れくさくなって頭を掻きながら答えた。

『この決闘…鬼兵隊が咬んでいる。アイツは高杉を信用しているみたいだが、俺は信用できかねる。あの男は何を考えているか解らない。ただ、決着をつけるきっかけにはなったな。』

『…』


精神を集中させたくて新八くんの家の道場で居合をしている。

道着に着替え長い髪を一つに束ねる。

入り口で正座をして深々頭を下げる。

稽古場の中央まで行き、目を閉じ顔も解らない敵を思い浮かべる。

相手の隙を突く。


『セイッ!!』


刀を振り下ろした瞬間…

『相変わらず惚れ惚れする太刀筋だな。**になら斬られてもいいと思えるな』

『…邪魔しないでもらえますか。間合いに入っていたら斬ってやったのに。お望みならいつでも』

『…眼が笑ってないぞ。ほら‥恐いだろ?』

『恐ェよ、**ちゃん』



『**ちゃん、お茶にしない?少し休みましょ?』

お妙さんの誘いで、皆でお茶をいただく。



新八くんがアイドルオタクだとか、お妙さんにゴリラのストーカーが付きまとっているとか、
皆がドライバーになったとか…柊も楽しそうに笑っていた。

彼の、こんなに笑う姿を見るのがあまりにも久しぶりで、私はそれがとても嬉しかった。

『**ちゃんと柊さんは恋人どうしなのかしら?』

柊が茶をふき出した。

『それはない!!絶対に嫌だ!!!』

『ナイナイナイ!絶対ナイ!!』

『そんなに?何か酷いんですけど。私も嫌なんですが。銀さんも酷いですよ!大体どうして銀さんが答えるんですか!』

『あっ‥つい‥悪ぃ』

『そうなの?お似合いだけど…。イケメンだし。少なくても万年金欠バカの天パ銀髪よりは、何百倍もいいと思うけど?』

『そう言われれば…』

『はいはい、そうですよー。銀さん地味に傷ついてんですけどぉ』

『柊は桃の許婚ですよ。私に付いてこないでサッサと結婚すればいいのに』

『まあ、今回の件が終わったら考える…というのはどうだろうか?』

『……』






『私、着替えてきます』

席を立ち、道場の方に歩いて行く**に声をかける。

『あのよ…これ、この前神社に行った時に貰ってきたんだけどさ…俺と神楽と新八から』

**の掌にお守りを置いた。

何故か、**はキョトンとしている。

『…私‥妊娠してないですよ?』

御守には<安産祈願>と書いてあった。

何やっちゃってんのォォォオオ!
めちゃくちゃベタな間違いじゃね?三人もいてこれかよ??

新八の野郎ちゃんと突っ込めよ!サボってんじゃねーよ!!

『フフ、銀さんありがとう!絶対負けないから!!それに将来もし妊娠しても、これで安産ですね。皆の気持ちが嬉しい。本当にありがとう。』

と言い、深々と頭を下げた。







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