気が付くと家の近くまで来ていた。
ふと家の前をみると、月の光に銀髪を輝かせた男が立っていた。
『…銀さん?』
『無事だったか。ほら…最近物騒だし、何か心配でさぁ…ってお前泣いてんのか?何があった??』
『えっ?泣いてなんて…』
そう言って自分の頬に触れると指先が濡れた。
『自分でも気が付かなかった。』
と笑いながら言うと、いきなり腕をひかれ抱きしめられていた。
**が泣いている…
そう思った瞬間抱きしめていた。コイツの泣いてる顔は見たくない。
それにコイツも見られたくないだろう。
『…俺には顔が見えてねーから…泣きたいならこのまま泣け』
そう言い終わったと同時に**は小さく声をあげ泣いた。
翌日、柊と桃に相談し結論をだした。
『晋助…私決めました』
『…そうか。で、どうすんだァ?』
『決着をつけます。それでお願いが…』
電話を終え、深呼吸する。
私は万事屋のチャイムを鳴らした。
昨夜の事を思い出したら急に恥ずかしくなった。
結構な時間、彼に抱きしめられていた。
男の人に抱きしめられるのは初めてだった。
『はーいはい。新聞ならいらねぇよ!』
ガラララ‥
『…昨夜はありがとうございました。泣いたらすっきりしました。今日はお話ししたい事があって。今お時間大丈夫ですか?』
『あ、あぁ‥。じゃあ中入っちゃって。』
『**さん、お茶でいいですか?』
『お茶請けに酢昆布1枚だったらあげるアル』
『新八、神楽。ちょっと出かけて来い!大事な話をするからよ』
『そう言って、私達を追い出して**を襲うつもりアル!!』
『そ、そうなんですかっ!!許しませんよ!銀さん!!』
『うっせーよ!!そんな事するわけねぇだろ!いいから行け!!』
『あの‥二人にも聞いてもらってもいいですよ。』
彼達に、私の生立ち、妖刀の事、先日の高杉晋助との会話などを説明した。
それから、自分の決意も。
三人は黙って聞いていた。
数日後、晋助から連絡があり……
運命の日が決まった。一ヶ月後に。
相手とは晋助が間に入り交渉してくれた。
・決闘までは、お互い手を出さない事。
・人数は問わない。
・拳銃などの飛び道具の使用は禁止。
・これを破った時は、立会人の鬼兵隊がその帯刀者を抹殺し、妖刀を没収する。
こんな約束事まで。
晋助は、刀しか使えない私達を気遣ってくれたのだろう。
彼には本当に感謝している。自分自身も幕府に追われているというのに。
ふと、彼との会話を思い出す。
聞いてはいけない、と思っていたがどうしても知りたくて。
『貴方はどうして危険なことをしているの?護りたいものはないの?』
『…俺から大事な人を奪った世界を壊すだけだ。護るもんなんてねェ』
『どうせなら地球自体を壊さなきゃね』
『お前ぇ、恐くねぇのか?死ぬことが…。』
『…死ぬのは恐くないですよ。人間いつかは死ぬんだし。ただ…護りたい、生きていて欲しい人達はいます。私より一分一秒でも長生きして欲しい。貴方もそのうちの一人なんですよ?どうか長生きしてくださいね。』
『…お前ェ阿呆だろ?』
『フフフ、でも貴方といると…心が安らぐから。』
『……ククッ。じゃあ、お前ぇさんのために長生きしてやらァ』
そうして、また二人黙って月を眺めた・・。
恋仲でないが、生きている間だけでも…
お互いが自分に必要だと思える存在でありたい。
心からそう思っていた。