ウルズがその街に足を踏み入れると、そこは小さな広場だった。
しかし、まだ午後だというのにその広場には人一人いない。それどころか、鳥さえ見当たらない。

500人は住んでいると予想される街なのだから数人位はこの広場にいてもおかしくなさそうだが。

ウルズは、直ぐ近くにある喫茶店に入っていく。

そっとドア開けると、普通なら従業員の声やお客の賑わう声が聞こえるはずなのだが、
扉が開いた時になる鈴の音のみがその店に響いていた。

店の中は綺麗とは言いがたく、液体が毀れた後があったり、椅子が倒れていたりと
清潔とは言いがたい光景だった。


店仕舞いしている喫茶店だったのだろうか?


しかし、よく見ればつい数日までは普通に営業していたような形跡がある。

ウルズはカウンターに近づいた。

「・・・?」

カウンターのレジの周りに赤い液体で綴られたような痕がある。
血液とも思える色だが、微量にこびり付いている程度で判断が難しい。

これが血液だとしたら、何か事件でもあり閉店につながったのかもしれない。


ウルズは店を出て、人を探すことにした。

別にこの街に人が居ない事など彼にとってはどうでも良いことだったのだが、救援が来るまでやることもない。
ましてや、周りに人が居ないのであれば暇潰す時間を作るティータイムさえ出来ない。

暇さえ潰せる何かがあればいいと思い、街を探索する事にしたのだが。




ウルズは、人気が全くない商店街を歩いていた。
ウルズの視線の向こうには、お洒落なレストランがあった。
見た目も綺麗だし、塀塗も綺麗である事から造られて1〜2年といった所だろう。
そんな造られて間もない店であれば閉店している可能性も少ないはず。

少しは期待できるといいのだが・・・・?

「?」

ウルズは、店から30メートル前からあるものを確認した。

―・・・・?あれは、人か?

店先のベンチに誰か座っているのを確認できた。

―体型からして女性か

ウルズは、ようやく合えたこの街の初めての住人にほっと一息つき、声をかけるため少しずつ近づいていく。

―しかし、あんな場所で何をしているんだ?

女性は、ただ座っているだけで携帯で話している様子や、誰かを待っているといった雰囲気もない。
体型、服装、髪型などから判断して20代前半〜後半だろう。
そんな若い女性なら、普通携帯やら鏡やら、なにやらいじっているのが普通だとウルズは思っていた。
彼の周りに居る、少女達も大体はそんな感じである。

―瞳は開いている・・・・。眠っては居ないと思うのだが・・・

女性の体は左右に揺れている。
電車の中や、座りながら眠っている時などに起きる現象とそれは酷似しているが、彼女の瞳は開いているのは、
ウルズの人間を凌駕する視力で確認できた。

極まれに瞳を開けながら眠る人間が居ると聞いた事もあるが、彼女はその類なのだろうか。

彼女の周りに近づくとそこには、異臭が広がっていた。
レストランの周りにこのような異臭、普通なら有り得ない。
彼は適応能力が非常に高い為、そんな異臭にも耐えれるが普通の人間ならばこの異臭耐え切れないだろう。

しかし、何の臭いだ?
あまり嗅がない臭いである。

ウルズは畏れ畏れ女性に話しかけた。

「取り込み中、失礼だが・・・・」

ウルズが話しかけても女性はぴくりとも動かない。
瞳も開けたまま、彼女は宙をずっと見つめているのだ。
しかも、近くでよく観察してみれば瞳孔も開いているではないか。その目はまるで死んだ魚のようだ。
もはや、生きている人間の目ではない。


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