「ハァハァ…」
彼は噴出すような汗をかいていた。
目の前に横たわるのは、先程まで彼と激闘を繰り広げていた大きな虎だった。
「…!」
彼は膝をつく。
そして左腕を右手で固定する。
左手からは、赤に近い紫色の液体が滴り落ちる。
その左腕は、ぱっくり割れていた。
「結構大きくついたな」
スリサズは、自分の左腕を見ながらつぶやいた。
彼は数分前、幾ら翻弄しても自分の動きを読んでくる虎に苛立ちを露にしていた。
即死させようにも自分の動きを読み回避するのだ。
「…一体どうやって僕の動きを読んでたんだ…?」
スリサズは、もう動くことはない大きな虎を確認する。
彼が先程虎の頭部を吹き飛ばしたので、ここに横たわる虎には頭がなかった。
「聴覚…が異常に発達してるのか…?」
しかし、この体…半分以上は腐っているようにも見える。
そんな体で聴覚が存在するのだろうか?
「または予知能力みたいなもの…か…?」
スリサズは虎の頭を見つめるが
さすがに頭を勝ち割って脳を調べる気にはならない。
思わずため息をついた。
そしてまた自分の負傷した左腕を見た。
「…めんどくなって左腕を差し出して動きを止めてやったけど。
結構大きくついちゃったな」
彼は、虎の動きを封じる為に自らの左腕を差し出したのだ。
案の定虎はその左腕に噛み付き、彼の肉を抉り取っていった。
しかし、スリサズはそんな虎の隙をみのがさない。
虎が噛み付いてきた瞬間に虎の頭部を吹き飛ばした。
「…にしても、僕の肉体は普通の動物じゃ食せないはずなんだけどな。
こいつ…普通に噛み付いてきたけど、どうなってるんだ?」
スリサズは、左腕の傷を自分の服を破り止血した。
「マシンセルで修復時間2時間ってところか。
ま、あんな雑魚ども片腕だけで十分だけど」
そして、虎を再度見つめ
−…けど人間じゃこんなのが出てきたらオーバーキルだろうな
スリサズはそう思うと他の場所へ駆けていった。
「へぇ、なかなか素早いじゃないか?」
アンサズは、蠍の針から逃げ回っていた。
というより、遊んでいる。
蠍が尾を振り回し彼を狙うがアンサズはそれを簡単に避けてみせる
「さすが、下等生物。攻撃パターンが一緒だねぇ?」
そう言って、アンサズは蠍に接近していく。
蠍はそんなアンサズに尾を振り回し針で一突きにしようとするが
「もうお遊びは終わりだよ?」
アンサズは、針を鮮やかに受け止める。
「全く…少しは楽しめるかと思ったんだけどねぇ?
見当はずれも良いところだったよ」
そう言ってアンサズは蠍の自慢の毒針を折った。
その折った毒針をまじまじと見つめにやけた。
「フフフ、君の毒針なかなか立派じゃないか?」
そう言った瞬間だ。
蠍の硬い殻に1本の鋭い“何か”が突き刺さる。
「せっかく良いものを持ってるんだ。こう有意義に使わないとね」
アンサズが嘲笑しながら、そう言う。
蠍はじたばたと暴れている。
「下等生物なりに抵抗するんだねぇ?
けれど、すぐ楽になるんだから、抵抗する必要なんてないんだよ?」
そう言って毒針を抜いて、今度は蠍の頭部に突き刺した。
蠍は地面に這いつくばり、足をじたばたさせるが、アンサズはそれに止めを刺した。
「…さて、蠍君は静かになったしもうここから脱出しちゃった方が良いんだろうけど。」
アンサズはそう呟きながら、息絶えた蠍を蹴飛ばし転がした。
「今回はサンプルも多いことだし、調べてから帰ろうかな」
そう言って周囲に散らばる、虫達の亡骸をまじまじと見つめた。
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