スリサズとアンサズがそれぞれ激戦を繰り広げていた頃。
ウルズ達は教会への侵入に成功していた。
「これは・・!」
教会の内部は、赤かった。
「一体誰が、こんなことを・・・?」
リズナは、そう言うとラヴィの目を手で覆った。
それは、まるで地獄絵図だった。
教会内部に居た十数人が無残にも血を流し倒れている。
ウルズは、一番近い犠牲者に駆け寄った。
既に犠牲者は事切れていた。
「く・・・、だめだ。死んでいる・・・・!」
ウルズはそう言うと、顔を背け歯を噛み締めた。
・・・自分がもしここに留まっていれば・・・・こんなことにはならなかったかもしれない。
そう思うと、悔しくて悔しくて自分が憎い。
けれど、それを選んでいたら、「彼女」はあの場所で死んでいたかもしれない。
彼女は失いたくない。
けれど、他の命だって助けたい。
彼女1人の命と、十数人の命。
測りに賭けられるわけはないのに。
どちらか選べと言われても、きっと僕は選べないだろう。
ウルズは小さく呟いた。
「1つしか選べないって言うのか・・・・?」
ウルズは、目を開いたまま息絶えた犠牲者の瞼を下ろした。
そして、リズナに言う。
「リズ、まだ生存者がいるかもしれない。向こうを探してきてくれないか?」
「向こうね。分かったわ」
「僕は、逆を探す。
もし大きな音がしても、決してこちらに来ないでほしい」
「? どう言う事?」
リズナにそう訊かれると、ウルズは「彼」が居た場所を見つめ、視線を下におろした。
すると、そこには何かを引きづったような
真っ赤な血痕の痕があり、それは今からウルズが行くといった部屋に続いていた。
「”犠牲者”を、犠牲にしなくてはいけないから・・・・」
そう言って、ウルズはその部屋に向かった。
それを訊いたリズナは全てを理解したのか、俯き
「・・・わかった」
リズナはその姿を見送った後ラヴィと共に、別の部屋を捜索を開始した。
ウルズは、銃を手にし銃弾を確認した後部屋の扉をゆっくり開けた。
―・・・!
ウルズは、先制攻撃で一気に終らせようと部屋が開いた瞬間に発砲する気で居たのだが、
そこには予想外の物が置いてあった。
「・・・これは・・・」
死体だった。
「・・・・」
イスに縛り付けられ、もがいた後がある。
身体の腐敗は、かなり進行していたが「ソレ」の瞳は唐牛で光を保っていた。
「酷すぎる・・・」
必死にもがき抵抗したのだろう。
「死にたくない」「殺さないでくれ」と叫んだのかもしれない。
顔には、涙の痕があった。
しかしその悲痛の叫びは、届かなかった。
左胸に一発。
右足に一発。
そして額に一発。
銃弾の傷跡があった。
「ウルズ」
リズナが、他の部屋を探し終え戻ってきた。
「・・・・リズか」
ウルズは、リズナをちらっと見て、目の前の犠牲者に視線を戻した。
「ウルズ、彼は・・・?」
「僕が始めてここに来た時は生きていたんだ・・・。
その時から、既に「死体共」に重傷を負わされてはいたのだけどね・・・」
「・・・・」
「確かに生きていたんだよ。」
「・・・・でも、どうして・・・?
ゾンビにやられてただけで、どうしてこんな酷い仕打ちを・・・」
「・・・噛まれた者は、彼らの仲間になるらしい。ソレを恐れたんだろうね・・・。
けれど、仲間になるとは確実に決まってたわけじゃない。
なる事もあるってだけで、助かる可能性もあったんだ・・!」
ウルズは、怒りと後悔。そして悲しみの篭った声で言った。
「なのに、こんな・・・。まだ生きているウチに束縛までして殺すなど・・・・!」
ウルズは、壁を叩いた。
彼の中に湧き上がる怒り、悲しみ、後悔をどこかにぶつけたかったのだろう。
ウルズがこれほどまでに感情を表に出すのは珍しい。
それはきっと、彼がこれまでの出来事で成長した証なのだろう。
人の命に対し、ここまで思いやれるようになった。
それはとても素晴らしい事だ。
だが今は素直にそれを喜べる状況ではなかった。
ラヴィがそんな時、リズナの手を引っ張った。
「おねえちゃん」
「ん、どしたの、ラヴィちゃん?」
「お兄ちゃんに言わないの?」
「ああ、そうだった。ウルズ、地下室の下に行く道を見つけたのだけど。」
ウルズはリズナの言葉を聴くと
「・・・更に下に?」
ウルズは、思い出した。
―・・・そういえば、地下室の更に下には武器庫があったんだったね・・。
・・・・それともうひとつ部屋があったはずだ・・・
「ええ、なんか厳重にカギが、かかってて、
開けるのに時間がかかりそうだったからまだなかは確認してない。
凄く安全そうだし、生存者が逃げ込んでる可能性もあるかもしれない」
「わかった、行ってみよう」
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