スリサズは、虎の予想外の行動に戸惑っていた。

―こいつ・・!目も見えないはずなのに、なんでこんなに僕の行動を正確に読んでくるんだよ!!

あり得なかった。
相手は猛獣の生きた屍のはずで、目も腐敗しており見えないはずなのに。
スリサズの行動を、読み正確に捉えてくる。

―聴覚か・・・?聴覚で、行動を読んでいるのか?!

スリサズは、足元に落ちていた石を拾い、自分とは別の方向に投げる。
石はごろんと音を立て転がり、虎の耳はその音に僅かに反応した。

―やっぱり、聴覚か・・・。
けど、聴覚だけでこんなに正確に僕の行動を予測するなんて・・・・


仕方ない。
僕の高度な動きは完全に読まれてる。
どんな動きで翻弄しようとも相手は完璧に読み追ってくる。
さすがに動きを先読みして先手を打ってくるようなことはないのだが・・・
相手はかなり機敏な動きをしてくるので厄介である。

―・・・あいつは僕の速さに付いて来る・・・。なら即死、させるしかないか・・・・!

スリサズは、虎の頭に狙いを定める。




「サソリも百足も、外は硬い殻か。
ま、百足は顎だけだけどサソリの方は針もあるからねぇ、面白い戦いになるかもね」

アンサズはその状況を楽しんでいた。
どちらかが負ければ次は自分の番だというのにその余裕っぷりは、普通に人間には真似できないだろう。

サソリと百足は両者睨みあいを続けていたが先程交戦状態に入っていた。
百足が絡みつき、サソリの身動きを止め噛み付くが硬い殻に覆われた身体には、掠り傷も付けられていなかった。
一方サソリの方は締め付けられ苦しんではいるが、噛み付き攻撃の方は全く効いていないらしい。

しかし両者とも所詮は虫である。
お互いの詰めの甘さに気付いていない。

だが、先にソレに気付いたのはサソリの方であった。

サソリは、胴体は締め付けられ身動きはとれずに居たが、サソリ最大の武器がある尾には百足は絡み付いていなかったのだ。
それに気付いたサソリは、尾を勢いよく百足に振り下ろした。

「なるほど。アレほどの大きさと、あの鋭さの針なら勢いよく振り下ろせば・・・・」

勢いよく振り下ろした尾は、針の重さと鋭さの効果でそのまま百足の胴体に突き刺さった。
胴体に鋭い針を突き刺された百足は、身体をうねらせ苦しんでいる。
サソリは、百足の拘束から開放されたのを期にもう一刺し百足の胴体に針を突き刺した。

―・・・・?

アンサズはその様子をしっかり見ていた。

―二回も刺した・・・?

サソリが、獲物に針を突き刺してからわざわざ抜いてもう一刺しするなどあまりない行動である。
普通ならば、針をそのまま突き刺し毒が回りきるまで抜いたりしないと思うが・・・・

しかし目の前の巨大サソリは、そうではなく明らかに針で突き殺している。
何度も何度も。
百足の胴体に針を突き刺し、百足が動かなくなるまで繰り返していた。

―・・・・・針で滅多刺しだって?
昆虫が、こんな残虐なこと何処で覚えたんだい!?


百足はぴくりとも動かなくなったのを確認したのかサソリは刺すのをやめた。
そして、こちらを振り向き尾をアンサズに向けた。

「・・・勝者は君かい?
いいよ、君の行動には少し驚かされたけど。直々に相手をしてやるよ・・・!」



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