「はぁ、なんて所だい?蒸し風呂じゃないか?」
アンサズは大温室の中を歩き回っていた。
彼は適応能力が非常に高いので別になんとも感じないのだが、
人間からしたらそうなのだろうと思い、口にしているのだった。
「・・・こんな蒸し風呂に彼女が居るわけないな。さっさと出ちゃおうかな」
アンサズはそう口にすると、ちらっと周りを確認する。
あまりの高温のためか、蝶や他の虫達が無残な屍骸となり散らばっていた。
アンサズはそれに近づき、何か分かるかもしれないと思い解析を始めた。
―ふむ・・・。やっぱり、この高温により生きられなくなったみたいだねぇ。
と、なるとここは意外と安全なのかな。
けれど人間でも耐えれないのなら、意味はない、か。
アンサズは立ち上がり先を急ごうとすると、前の茂みが動いたのを確認する。
この温室の中は、今は無風の状態。自然に動くはずはない
―・・・・生きていられる奴も居るってことかい・・・・
アンサズは、そう思うと戦闘準備を整えた。
そして、茂みから正体を現したのは・・・・・
「これは、これは・・・。また大きいねぇ?」
アンサズはその姿を見て思わず口にする。
先程、蜘蛛エリアを通った時いくつかのゲージが壊れたいたのを思い出した。
どうやらこれは、
「あのゲージに居た蜘蛛かい」
アンサズの目線の先に居るのは、2メートル以上ある巨大なタランチュラだ。
「全く、なんで毒を持ったやつばっかり放し飼いなんだい?
ここの飼育環境は最悪すぎるね・・・!」
アンサズはそう溜息混じりに呟くと、
勢いよくタランチュラに向かっていき足をもぎ取りにかかる。
「毒をもった蜘蛛だろうが、巨大蜘蛛だろうが・・・・」
タランチュラが襲い掛かる。
「僕にとっては赤子同然なんだよ?」
アンサズはそう薄ら笑いを浮かべると、タランチュラの足を4本一瞬にしてもぎ取った。
タランチュラは足を持っていかれると、バランスを崩しよたつくがまだ生きていた。
「・・・へぇ、凄い生命力だ。8本中4本も奪ったのにまだそんな元気があるなんてねぇ?」
タランチュラは、糸を吐き散らし始めた。
しかしその弱った身体では、糸を吐く速度も遅く、アンサズの敵ではなかったのだが・・・・
―・・・!!
タランチュラの背後に異変が生じた。
無数の足。縦に長い胴体。
―こいつ、さっきの・・・!!
巨大百足だ。
自分を追ってきたのか?
アンサズを追いかけてきたのは間違いなさそうだが、今の目的は彼ではないらしい。
背後から現れた百足は、弱ったタランチュラに絡みついた。
最初の目的はアンサズのようだったが、目の前に弱ったタランチュラが居たことから
どうやらタランチュラにターゲットを乗り換えたようだ。
・・・これを食し終わったら次はアンサズの番のようだが
―おやおや、昆虫界は険しいねぇ?
・・・今のうちに始末しちゃおうかな。食事に夢中みたいだし今なら簡単に殺れる
と、思い近づいたのだが・・・・・・・・・・・・
!!
百足のお食事中に横から飛び出してきた参戦者が登場したのだ。
―・・・また、増えただって?いい加減にしてほしいねぇ・・・。
次に現れたのは、巨大なサソリである。
今まさにタランチュラ、百足、サソリの凶暴かつ肉食の昆虫が顔をあわせた
しかし、幸いにもどうやらこの3匹。群れを成しているわけではないらしい。
3匹ともアンサズを狙ってここに集まってきたのかどうかは知らないが、
この3匹はお互いに捕食しあうもの同士のようだ。
その証拠に、百足はアンサズが弱らせたタランチュラを美味しそうに食しているのだから。
百足がどうやらサソリの存在に気付いたらしい。
サソリも百足の存在に気付いたらしく、両者にらみ合いを始めてしまった。
タランチュラのほうは、もう既に息はなく死に絶えているようだ。
―別に3匹同時でも負けるわけないけど、めんどくさいことはしたくないからねぇ・・・。
お互い潰しあってくれるなんて、素晴らしいじゃないか?
共倒れしてくれるとあり難いんだけど、そう言うわけにも行かないだろうし、
僕は勝った方の息の根を止めるとしよう
アンサズはそう思うと観戦を始めた。
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