10話


「チィッ・・・!」

スリサズは、襲ってくる猛獣に似た怪物と対峙していた。

それは、見た目は大きな虎のように見えた。
しかし、よく見ればその瞳は、腐敗しており目玉が飛び出している。
目玉は僅かに繋がっており、怪物が動くたびに揺ら揺らと、
自分の目玉を揺らしながら近づいてくる様は、スリサズですら狂気を感じざる負えなかった。

―この目じゃ、視覚は使えないはずだ・・・!
なら、予測できないような動きで翻弄すれば・・・!!

スリサズはそう判断すると勢いよく、近くの木に飛び乗った。

―あそこから、ここまで一気に飛んだんだ。
普通の生き物じゃありえない動きだし、予測は出来ないはずだ。

しかし・・・・

―!?

虎の姿をした怪物は、彼の居る木を見ている。

そして。

目玉を揺らしながら木に近づき、木を雄たけびを上げながら引っかき始めたのだ。

―そんな馬鹿な・・・!?
鳥のように、羽ばたきの音もさせていないし目が見えないんじゃ虎位の動物じゃ予測できないはずなのに!!

前も少し話したとおり、スリサズの身体は8割以上機械の細胞だ。普通の動物では食せない。
食せない物、自分の命を危険に曝す物を、動物は嗅覚で判断する。
彼は食せないものだし、この虎の命を狙ってきたわけでもないので普通ならば反応しないはずなのだ。

―どう言う事なんだよ、これは!

スリサズが居る木を唸りながら、引っかいて揺らしている動物を見ながら彼はこう思った。

―なんだよ、こんな怪物ですら人間とは違う「ボクたち」を危険視するって言うのか・・・?
今は何もしてないし、今の僕たちただ生きているだけじゃないか・・・!

スリサズはこの動物がなぜ自分を判別できるのか必死に考えた。
考えても考えても、理解は出来ず。
しかし、いつも頭の隅に置いてあった事をいつの間にか考えてしまった。

そう、人間達は自分と違うものを認めれないこと。
自分達を危険視していること。
そして、人造人間の命などなんとも思っていないこと。

彼は、この動物を見てそんな事を考えてしまった

食せないものをこんなに執着して狙うわけはない。
なのに、こいつは僕を狙っている。
・・・・と言う事は、やはりこいつも僕を危険なものと判断している、とスリサズは思ってしまったのだ。

―・・・・こんなところでも、やっぱり結局はソレなのかな・・・

スリサズはそう呟くと、虎の怪物を目掛け急降下した。


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