「ここが昆虫館かい」

アンサズは、大きな建物を眺めていた。

「折角来て見たけど・・・。落ち着いて考えてみたら、あの子足の多い虫が苦手だったはずだねぇ・・・」

アンサズは、失敗したと言う表情で呟いた。

「さすがに、こんな状況だから、我慢して入るかもしれないけれど・・・」

アンサズは、そう呟きながら案内板を流し見る。

「1エリアめが、ムカデ類かい。いきなりあの子が苦手な物じゃないか」

アンサズが、さらに失敗したという表情をし、

「3エリア進んだ所で、蜘蛛類その後に、昆虫に実際触れたり真近で見れる大温室か。
・・・・どこもあの子が嫌がりそうな物ばっかりだねぇ・・・」

しかし、中は多少は外よりも安全、といった雰囲気がある。
あいつらの腐敗は、動物に何かのウィルスで起きている現象だとしたら、
昆虫は硬い殻で覆われている為雑菌や、ウィルスに感染しづらい。
ならば、この中は外より多少は安全かもしれない。

彼女なら、そんな判断を下すのは容易だろうし、自分の命を優先する為に入っていくかもしれない。

「仕方ないね、少し探索してみるとするかな」

アンサズはそう言うと、閉鎖してある扉を勢いよく破壊し中へ進入する。

―ああ、勢いで扉を壊しちゃったけど・・・、落ち着いて考えてみたらあの子が中に入ってるとしたら
どこか入れるような場所があるかもしれないんだったね・・・

アンサズは、最近の自分は詰めが甘いと自覚する。

―もっと早く気付くべきだった・・・。中に入れる場所を最初に確認すれば、見つからなかった場合入ることもなかったのに・・。

アンサズは自分が壊した扉を、見る。

我ながら、派手に壊している。
もう扉だったころの形跡は殆んどない。

―もうこうなったら、戻るのも面倒だし、中を調べた方が早そうだねぇ・・・。

アンサズは、そう思うと1エリア目の扉に手をかける。
普段は自動ドアのようだが、今は営業していない為開かない。

―ここも壊すしかないか。

そう言うと勢いよく破壊する。

彼は自分の強さに自信を持っているため、
この音で何かが自分に気付く可能性があるという事も分かっているが、全く気にしていない。
むしろ、この音でリズナが自分に気付いてくれればラッキーといった感じである。

アンサズは、ムカデ類のエリアに入ると面白半分でゲージの中を確認する。

ゲージの中にはムカデが大量に入れられており、その中には勿論毒をもつモノも居た。
毒など、彼にとっては消毒液や、お湯と変わらない為、全く気にはしないのだが。

「ふむ・・、虫の普段の行動は専門外なんだけどねぇ・・・。」

アンサズは、自身が持つ微量の昆虫の行動パターンのデータを駆使する。

「ムカデのデータなんて殆んどないんだよねぇ・・・。」

アンサズはそう言うと、周りのゲージを見る。
壊れたゲージがいくつかあり、どうやら外部に昆虫や虫が出てしまったようである。
そのゲージのひとつには「ぺルビアントジャイアントオオムカデ」と記されている。

「・・・世界最大の、百足だったけねぇ」

通常20センチから30センチ、最大になると40センチ以上にもなる巨大百足だ。
その巨体から、顎の力は非常に強力で毒も強力だと云われている。
しかも、性質は非常に凶暴であり、触れたもの全てに噛みつくのだと言う

まあ、アンサズにとってそんなムカデですら小蝿と一緒なのだが、
人間にとっては非常に危険な虫であるのは間違いない。

アンサズは、辺りを確認しつつ次のエリアへ進もうと出口に向かう。
すると、出口は壊れており辺りにはガラス散らばっていた。

次はバッタエリアだった。

アンサズは、そのエリアに入るとすぐに彼の腕に止まるバッタ達。
すると、そのバッタ達は、口を動かしているのがわかった。

どうやら、アンサズのことを食べようとしているらしい。

「なるほど。そう言うことかい」

アンサズは、そのバッタ達を勢いよく払い除けた。
いくら様子が可笑しいと言っても、身体は普通のバッタと同じである為彼の力で払われたバッタ達は、粉々に吹き飛んだ。
しかし、無数に飛び回るバッタ達は次々アンサズに飛びつき彼を捕食しようと噛み付いてくるのだ。

アンサズは、その人間を凌駕する反射神経で全てを振り払いそのまま駆逐するが、さすがに数が多いようだ。

―・・・! さすがに、多すぎるか・・・!

アンサズは、視界になる部分にだけ飛ぶバッタだけを振り払う。
そして、自分の視界を確保し次のエリアへ強行突破するのだった。

アンサズは、凶暴化した昆虫や虫達の居るエリアを潜り抜け、休憩場所のようなエリアに来ていた。
そこでアンサズは、案内板を見ていた。

―ここから次は蜘蛛エリアか。次は大温室・・・ねぇ

そして、アンサズは辺りを確認して溜息をついた。

なぜかというと、その案内板に、
飼育エリアを通らずとも、ここまで来れる道のりが記されていたからだ。

―・・・・もっと確認してから移動するべきだったか・・・。
いや、でもどうせこの道を通っても居なければ全て確認する必要があったし関係ない・・・か。

アンサズは、休憩場所に設置してあるお土産売り場を見た。
お土産売り場は、荒されている。
彼は、おもむろに品物を取る。

―人間に荒らされたわけじゃなさそうだねぇ

なぜそう思うのかというと、彼が手に取った品物には、噛み傷のようなものが付いている。
みたまんまの虫食いのような跡である。

―さっき・・・、百足エリアの扉が壊れていたっけねぇ・・・。
しかも、壊れていたゲージは、世界最大の百足・・・・・

アンサズはそう思うと、近づく気配に身構えた。


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