「ああ、もう此処どうなってるんだよ!」
スリサズは向かってくるゾンビを殴り飛ばしぼやいた。
アンサズも、ゾンビ達を翻弄しながら、スリサズに答える
「ほんとだねぇ。何処行ってもこんな奴らばかっりだ」
「スリサズ。あそこに入るよ」
「あそこ?あそこって、動物園か!?」
「そうだよ。あそこならきっと僕ら以外の生き物も居るだろうし、
少しは時間稼ぎにもなるさ。ま、生き物が居れば、だけどね」
「動物を囮にする気か?!」
「そうさ。こんな状況なんだよ?
今は自分たちが生き残る事を最優先にすべきだからねぇ」
「チッ・・・!なんて所だよ、ホントに・・!」
2人は、閉鎖された動物園の門を飛び越え中に入っていった。
そこは、当たり前だが誰もおらず、動物の鳴き声だけが響いていた。
「おやおや、係員が居なくなって猛獣達がお腹すかせてるのかねぇ?」
「・・・ただの猛獣ならいいけどね」
スリサズは、そう言うと周りを確認する。
「係員のゾンビとか出るかな、だけど外よりは少ないか」
「どうだろうねぇ。まあ、多少は安全だと信じたいけどね」
スリサズは、そう言うと近くにあった折の中を覗き込む。
すると、凶暴化した動物がスリサズに手を伸ばし、引っかこうとしてくる。
動物の目はすでに、焦点が合わなくなっており口からは泡のようなものを噴出している。
「なんだよ、これ・・・・」
それをアンサズも見て、
「・・・・どうやら、餌が貰えてないだけではなさそうだねぇ」
アンサズが奥の方を見ると動物達は、全て同じように口から泡を吹き出し、
ぐったりしているか、または凶暴化し暴れまわっていた。
「・・・・脳に原因があるのかな」
「どうだろうな。脳の何かがあるのは間違いなさそうだけど。
人間の方は、間違いなく腐敗してるけど、こいつらの肉体はまだ腐敗してなさそうだな」
「まあ、檻に居るんだから危害はないさ。
さ、中を通ってリズナを探しながら、外にいくよ」
アンサズはそう言うと、歩いて行ってしまう。
スリサズはその後を追いかけた。
暫くすると、猛獣広場に出た2人。
雄たけびが響き、暗闇の中に騒々しい空気が流れる。
「猛獣エリアみたいだな」
その響き渡る雄たけびを聞いて、スリサズが言うと、アンサズが笑いながら言う。
「けど、所詮は檻の中。
いくら強く凶暴な猛獣だって、檻の中じゃ赤子と一緒だよ。
それに、僕らはやわな人間じゃない。
檻の中じゃなくたって、たかが猛獣、赤子と一緒さ」
「だけど、ここにリズナが居たとしたら、危険なのは間違いないだろ。
あいつは人間だし」
「確かにねぇ、けど一体なんで攫われたんだろうねぇ?
というより、「誰に」って言った方が正しいかな」
アンサズが、疑問を述べるとスリサズも頷く。
「うん、怪物が攫って行く分けないし、犯人は人間ていうのは間違いないだろうな」
「けど、なんで攫っていく必要があったんだろうねぇ?
こんな場所でそんな事する意味が全く思いつかないんだけれど」
「そうだな・・。こんな死者が溢れ返る状況で、
女一人さらたって何が出来る訳でもないだろ。
それとも、死ぬ前の僅かな一時を、女と楽しみたい馬鹿な人間でもいたか?」
「人間は、こういう状況だと感覚や思考が可笑しくなる奴も居るからねぇ。
外れではないかもしれないよ?
けど、そんな連中に攫われたなんてウルズが知ったら、
確実にそいつらは死ぬより辛い苦しみを味わう事になるだろうね」
「恐ろしい、話だな。まあ、そんな連中が居るって決まった訳ではないけど。
でも、攫われたのは事実だからな、何かしら理由があるのは間違いないはずだ」
スリサズは、そう言うと看板の前で足をとめた。
「分かれ道だな。
左は、昆虫館、右は当分猛獣エリアが続くらしい」
「ふむ。どっちにも居るとは思えないけれど、攫った連中が何を考えているか分からないからねぇ。
居る可能性も捨てきれないのが、厄介だね」
「仕方ないさ。じゃあ、どうする?」
アンサズが、左を向き一歩歩く。
「じゃあ、僕はこっちを見てくるよ。一通り見終わったらここ集合でいいかい?」
「ああ。じゃあ又後で」
2人はそう言うと、別々の方へ歩いて行った。
そこに何が待ち受けているのかも知らずに・・・・・・
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