8話


リズナは、正面から来る化け物に先制攻撃を挑んでいた。
愛用の鉄棒を前に突き出し、先制で突き刺そうとするが、

―!!

突き刺さりはせず、モンスターの身体に滑り失敗に終ってしまう。

やはりモンスターの身体は全体濡れており、異様な異臭を放っていた。
緑色の液体を身体全体に纏わせ、その液体が地面に垂れている。
どうやら、先程の水が垂れる音はこの液体らしい。

緑色の液体により、モンスターの身体は滑りぬるぬるとしていて
どうやら、力任せに鉄棒を突き刺すのは難しそうだ。
滑る事も許さぬスピードで突き刺せば問題ないのだろうが、
この鉄棒を手放してまで念動力でそれをするのは、
後方にも何者かが迫る状態でリズナの判断を鈍らせていた。


モンスターはぎょろりとリズナを睨むと、大口を開けてリズナに襲い掛かる。
リズナは、滑るのを承知で足蹴りを食らわせ、鉄棒で一振り打撃を与えてみる。
蹴りで、液体を少し拭き取り、拭き取った場所鉄棒で攻撃したのだ。

モンスターはよろけるが、たいしたダメージにはなっていない様子だった。

―この液体のせいで打撃とかはあんまり効かないのか・・・!

リズナは仕方なく銃を取り出しモンスターに放つ。
銃は、モンスターの身体に当たり、
鈍い鳴き声を上げながら痛がっているようだった。
銃弾が当たった所から、緑色の液体が溢れ出し床にボタボタと零れ落ちた。

―へぇ、銃は効くんだ?
けど、あんまり使いたくないんだよね・・!

リズナは、モンスターの傷口めがけ鉄棒を振り下ろす。
すると、モンスターの傷口に当たり更に苦しんでいるようだ。

―さすがに、傷口を攻撃したら痛いでしょ・・・!
けど、もたもたしてられないわね

リズナは、そう思うと鉄棒を上に投げる
そして、その鉄棒を遠隔操作し勢いをつけ傷口へ猛スピードで突撃させたのだ。

鉄棒は勢いよくモンスターに当たると、モンスターは手でガードしたようだが、
そのスピードはそれを許さず弾き飛ばし傷口へ一直線に向かった。

ギャアアアッ!!!!!

モンスターが悲鳴を上げた。
声は火葬場全体に響き、不気味に音として広がった。

リズナは、悲鳴を上げたモンスターにかまわず傷口をえぐる。
そして、抵抗できないモンスターの頭部を狙い一発銃を撃ち込んだ。

ギャアアアアアアアアアアアアッ!!!!

モンスターは更に悲鳴を増し、
緑色の液体を頭から大量に噴出しながらその場に倒れこんだのだった。


―一匹・・・!!

リズナは、一体目を蹴散らし後方を振り向いた。
既に、リズナの肉眼でも確認できるほど近づいてきており、
今まさにリズナの方へ突進してくる直前だった。

リズナは、突進してくるモンスターを銃で迎え撃った。
3発撃ち込んだ所で、怯まない事を確認すると
リズナは横にずれモンスターの突進を回避する。
モンスターは、一体目の死体を踏みつけながら、
数メートル先で止まるとリズナの方へ方向転換する。

どうやら一体目と全く同タイプのモンスターのようで、
姿かたちは変わらないのだが、一回り大きく、腹が膨れている。
その分、此方の方が誤差だが動きが鈍いようだ。

リズナは、一体目に突き刺した鉄棒を遠隔操作で自分の元へ戻すと、
ガードとして自分の前で浮かせたまま待機した。

―攻撃方法は同じだと思うけど・・・。この腹気になるわ・・・

リズナは膨れた腹が時々ぴくっと動くのに気付いていた。
波打つような動きで、何かが腹の中に居るかのような動きも確認できる。

―ちょっと、マジで考えたくないんだけど・・・
この動き・・・・

・・・・・・妊娠してる・・・!?


腹の中で何かが動く。
一番考えられる可能性はそれだった。

―やめてよ、目の前で出産とか勘弁してよね・・・

リズナは、苦笑いをしながら攻撃態勢に入った。

モンスターは不気味な唸り声を上げ、リズナを狙う。
リズナは、鉄棒を前に出しその鉄棒にモンスターが引っかかるのを確認すると、

―全く、靴が汚れちゃうわね・・

と、思いつつまたもや蹴りで液体を拭き取った。
そして、

―弾も残りの少ないんだから、早く消えなさい!

そう言って、銃をゼロ距離射撃する。
2発撃ち込みさらにそこへ蹴りを入れた。

モンスターはよたよたと、緑色の液体を垂流し不気味な声を張り上げる。
リズナが狙ったのは、腹であり妊娠もしているなら
産まれてくる子供にもダメージがあるはずだ。
この場で出産されて、動きが止まるのは良いのだが
その後子供と一緒に襲い掛かってこられては面倒である。
その為、リズナは子供ともども始末できる腹を狙ったのだ。

リズナは鉄棒を手に取り、

―さようなら、短い付き合いだったわね

サイコキネシスを使って、傷口から腹に突き刺した。


リズナは2体の掃討完了させると、その場に座り込んだ。
2匹倒したところで、不覚にも気を抜いてしまったのだ。



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