―挟まれているの?
どちらが此処にくるのが早い・・・・?!

足音の大きさからして、前から来るほうがどうやら近そうだ。
だが、ほんの微妙な違いである事から2,3メートルしか差はなさそうだ。

―・・・・先制攻撃で、先にどっちか沈めるべきか・・・・?
いや、相手の姿が見えてから行動を起すべきか・・・!

相手が、同じ人間ならば簡単に判断が付くのだが。
だが、今の相手は正体不明の怪物だ。
例えば、神話や物語上に出てくるヴァンパイアだの、
悪魔だのであればある程度対処法も思いつくものを・・・・。
実際に、ゾンビなら簡単に対処できているのだからその考えはあながち間違いでない。

リズナは、はぁと溜息をついた。

普通の人間の思考で考えるから間違いなのだ、とリズナは思った。
リズナは、能力を行使する決意をする。

―仕方ないわ・・・。相手は2匹。正体不明ときたら、もうためらってる場合じゃない
・・・・さあ、きなさい。たっぷりと遊んであげるわ・・・!!




「ラヴィ大丈夫かい?」

ウルズは、ラヴィに手を差し伸べた。

「うん!」

ラヴィは懐中電灯を、一生懸命もちながらウルズの前を照らしていた。
その懐中電灯は、かなり前が照らせるもので
どうやら少しラヴィには重たいようだ。
しかし、今それを代わりに持ってあげては、
ゾンビやらが出てきた時に対応が遅れてしまう。
ウルズは、ラヴィを気にかけつつ、周りに気を配っていた。

火葬場はもう目前まで迫っていた。
火葬場の明かりは、3階から2階まで既に点いており
何者かが移動していることが伺える。
しかし、先程から1階の電気がまだ点かない。
2階の電気が点いたのはもう15分ほど前だ。
移動しているのならば、そろそろ1階の電気が点いてもいい頃である。
火葬場にも、やはりゾンビやら、化け物どもが徘徊しているだろうから、
殺されてしまった可能性は十分にあった。

―急がないと・・・・。
今ならまだ間に合うかもしれない・・・!

しかし、これでもラヴィにとって最高速度であり彼女も一生懸命早歩きをしている。

ようやく火葬場に着くと正面はゾンビが数十体徘徊しており、
ラヴィを連れては通るのは危険である。
しかし、今の彼にとっては、悠長に裏口を探している時間は惜しかった。
ウルズの、分析によれば恐らく彼らは、
微音ならば感知できないという結論に到っていた。
さすがに、余りに大きい音を出せば気付かれるのでウルズは正門から少し離れた窓を、割って進入を果たした。

火葬場に進入したウルズは、遠くから聞こえる何者かが争うような音に気がつく

銃声と、何かがぶつかり合う音。
そして、重い物が何かを吹き飛ばすかのような鈍い音。

それに混じり、何かの薄気味悪い鳴き声が聞こえる。

銃声を放っているのは生存者であるのは間違いないとして、この薄気味悪い鳴き声は・・・・

よく耳を澄ませば、水滴が地面に思い切り叩きつけられるような音も聞こえるではないか。

―水滴・・・?
まさか、溶解液か!?

この間遭遇した化け物は、口から溶解液を放っていた。
あのモンスターだけが、溶解液を持っているとは考えにくいし、
他にも持っている物は居るだろう。

非常に不味い状況である。
普通の一般市民がそんなもの上手く避けれるとは思えない。
致命傷を避けられたとしても、大きなダメージを与えられるのは目に見えている。

ウルズは、生存者が居る方へ急いだ。


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