7話


ウルズは、見張り位置で見た事を、確認する為指導者を呼び出していた。

「君に確認しておきたい事がある。」

「なんでしょう?」

「此処から見える、あの大きな建物だ。」

「あの大きな・・・?」

「ああ。そうだな・・・。方角は、北45度くらいかな」

「北にある、大きな・・・。あぁ・・それはきっと火葬場ですね」

「火葬場?」

「ええ。かなり大型の火葬場があるのですよ。
一度に5組ほどの団体の葬式が出来るほどの大きさです。
この教会も、あそこが出来るまでは住民に使われていたのですがね。
葬式もあちらで出来てしまうため寂れてしまいました。
まあ、今はそんな寂れた教会もこんな形で使われているのですが・・・ね」

どこか寂しげに、この教会の経歴を話す指導者。
それは、指導者の顔ではなくこの教会を長く愛し続け、昔から仕えてきた神父の顔だった。

「ところで、その火葬場がいかがしたのですか?」

「灯りが灯っているんだ。生存者がまだいるのかもしれない」

ウルズが指導者にそう尋ねると、彼は考えてこう答える。

「その可能性は十分考えられますが・・・・、外は非常に危険です。
確認しに行くのは自殺行為ですよ」

「・・・・しかし、見殺しにはできないだろう?」

ウルズは即答する。
指導者はその言葉に、心を打たれたのかウルズを酷く賞賛した。

「あなたはとても素晴らしい人だ」

「・・・そんなことはない」

「いえ、あなたは凄く強く、美しい。まるで天使のようだ。
あの子供があなたに懐くのも頷けます。
きっとあなたなら、本当に人々を、いや世界を救えるかもしれない」

ウルズは、そんな神父の言葉に苦笑すると

「その言葉ありがたく受け取っておくよ」

ウルズは、そう言うと一階へ降りていった。そして体力のありそうな男達に

「僕は、生存者の確認に行く。
すまないが、君達に見張りを任せたい。」

その言葉に口々に人々は

「そんな、無茶だ!!」

「そうよ、外には奴らがうろついてるのよ!!」

「そうだ、死にに行くようなものだ!!!」

生存者が大反対する中、ウルズは静かに答えた。

「僕のことは心配しなくていい。
それに、生存者の確認が出来次第、電話会社へ向かう。
最初から電話会社にジャックの原因を突き止めに行くつもりだったからね。
どの道、外へはいくつもりだったんだ」

そんな話をしているとラヴィが起きてきてしまう。

「おにいちゃん・・・」

「ラヴィ、すまないけれど君は此処にいるんだ。大丈夫、直ぐ戻ってくるから」

「いや!」

「ラヴィ・・・」

ラヴィは涙ぐみながら嫌々と訴える。
最初はただ愚図っているだけだと思っていたのだが・・・・

「ラヴィ、わがままを言ってはいけないよ。
外は凄く危ないのは分かっているだろう?
ここにいるのが一番安全なんだ。だから、君にはここに居て欲しい」

「嫌だよ。絶対やだ!!」

ウルズは、言っても聴かないラヴィに困り果ててしまった。
小さな子供と接するのなんて本当は初めてだったから、
こういう場合どうすればいいのか分からなかった。
しかし、次に言ったラヴィの言葉にウルズは考えを改める事になる。


「ここは嫌!怖いんだよ!」

その言葉にウルズは、疑問に思い訊ねる

「怖い?どういう事だい?あそこに居る怪我をしている人のことか?」

しかしラヴィはその問いには大きく首を振る。

「ちがうの!うまく言えないの、でもすごく…怖いの!」

ウルズはその言葉を深く受け止めることにした。

−…小さな子供は動物的な勘が、鋭いと聞いたことがある。

人間には、特殊な能力を持っている者もいるも少なくはないし、
もしこの子もその類のものを持っている可能性も十分にある。

ならば、ここに居る大人達よりもずっと信用できるかもしれない。

「…わかった、行こう」

ウルズがそう言うと、ラヴィはとても喜び抱きついた。
そんな様子を後ろで見ていた神父

「ではこれをお持ちください」

彼はそう言って、懐中電灯をラヴィに手渡した。

「この闇夜では人の目は役に立たない。これがあれば多少はマシになるでしょう」

「ありがとう、助かる」

そう言ってウルズは彼に一礼する。
そんな様子を見て、彼はにこりと微笑んだ

「私はリチャードです。
もし無事に戻れたらあなたとはゆっくりお話がしたいものです」

「ああ、僕もだ」


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