彼女は、蛾に襲われついに弾を切らせてしまった。
弾は一応予備を持ち合わせている。
が、しかし入れ替えている暇などあるわけはない。

―!

リズナは襲い掛かる蛾達を、腕で振り払うのは危険と判断した。

舌打ちすると、リズナは周りに椅子があることに気付くのだった。
椅子が5つ。かなりの重さがありそうだ。
しかし女性の彼女の腕力で持ち上げられるはずなかった。
だが、彼女には腕力で持ち上げる以外にこれを動かす事の出来る術があったのだ。


リズナが集中する。
すると、5つの椅子が浮き上がる。
浮き上がった椅子はそのまま全て勢いよく蛾の大群に突進する。
5つの椅子に、突進され蛾達は潰れ、身動きが出来なくなり
半身潰れたもの、即死したもの、運良く椅子から逃れたものが居たが
明らかに半分以上の数が居なくなった。
リズナは、そのまま椅子をもう一度残った蛾に突進させ残りの蛾も始末するのだった。

―・・・・・、この蛾の掃討は完了したわね。

リズナは、この部屋に居た蛾が全部死に絶えた事を確認すると、
手持ちの武器を再確認した。
愛用のハンドがンに予備の玉を入れる。
12発入るハンドガンに玉を満タンに入れる。

―銃に12発。・・・予備も12発。

彼女の手持ちの弾は全部で24発。
はっきり言ってなんとも心もとない数字だろうか。
もし、先程の蛾のように格闘戦をすべき相手ではない敵に出くわした場合、
この24発を少しでも温存しつつ対処しなくてはならない。
逃げるという選択肢も勿論有るわけだが、
確実に逃げ切れるなんて保証も何処にもない。
最も確実な方法は、自分の命を狙う相手は全て殺す事だ。
この方法は、1度出くわした後はそいつには次に会うことが
なくなるという利点もあるのだが最も危険な方法とも言える。
しかし、今の状況でどの方法が一番確実なのかなんて測れるわけもない。

―逃げても、戦ってもどっちも危険か。全く厄介な街だことで。

しかし、彼女には先程使った力がある。
万が一の時あの能力を使えば少しは勝率も上がるだろう。
本当の事を言えば、出きれば彼女は能力を使いたくはなかった。
なぜならば、この能力も地味に体力を消費するものであるからだ。
格闘戦も、体力を使うのは確かだが能力を乱発すれば
何が自分の身に振りかかるか自分でも予想つかない。

彼女は、自由自在に能力を行使できるのだが、
普通に戦う時は大体格闘で戦える相手だったし
銃を使えば大体楽に相手の息の根を止めることができた為、
自分の持つ特殊能力を長時間多用しながら戦った事がなかったのだ。
その為、長時間多用し続けた結果のデメリスクが全く予想がつかないのだ。

だが、そのような事を言っては生き延びる事はできない。
彼女は、出し惜しみをしてはいられない状況にいるのだ。

―・・・・

リズナは、決意をし扉を開け部屋を後にした。


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