「やはり、彼らは死体なのか?」

ウルズは、指導者に話を聞き動く屍について知識を得ていた。

「ええ。一般的な言い方をしますと、≪ゾンビ≫と言うのが良いのかもしれません」

「ゾンビか・・・、しかしどうしてあんな物が現れた?
こんな現象常識的に考えて自然現状では有り得ない」

ウルズが尋ねると、指導者は大型の病院がある方角を見つめた。

「私も詳しい事はわかりません。しかし、奴らが現れる2週間前の事です。
あの病院で、患者が数十人突然行方を眩ませたのです」

「患者が、行方を?」

「ええ。そしてそれから2週間後です。突然奴らが現れたのです。数は数十匹。」

「数十?・・・・患者の人数と大体合っているね
しかし、外には数え切れないほどのゾンビが居るが・・・・」

「彼らの脅威はここからなのです。
ゾンビどもは街の人間を次々捕食していきました。
そして、捕食された住民は次から次へと、身体を腐らせていき・・・・」

指導者は、目を閉じて恐怖に顔を歪めながら

「最終的には、ゾンビと化したのです・・・・・」

ウルズは、その指導者の言葉に、最初は言葉も出なかった。
そして、はっとして傷をついた男の方を見る

「では、捕食されたものはゾンビ化するのか?!ならば、あそこに居る彼もいずれは・・・!」

指導者は首を振る。

「それはわかりません。
捕食されてそのまま食われたもの、
ゾンビ化したもの、
捕食されても生き延びたものの3通り居るのです。
生き延びたものは、単なる偶然いや神の奇跡なのかわかりません。
しかし、その基準やその仕組みが分からない以上
彼が必ずゾンビ化するとも言い切れないのです。」

指導者の言うとおりだ。
彼が、必ずしもゾンビと化すとは限らない。
しかし、ゾンビとならないとも言い切れない。

この二つの選択。
人間にとっては、異常なまでの不安だろう。
当事者の彼は恐らくそれ以上の恐怖と不安を抱えて今を生きている事だろう。

「ゾンビに関してはわかった。では、他のモンスターについては?」

ウルズは、遭遇した怪物のことを彼に話す。

「私が知る限り、狂犬の方はただ犬のゾンビというだけです。
他の怪物については残念ながら私には何も分かりません・・・・」

「そうか」

「あ!」

今まで黙り込んでいた指導者の護衛のような男が急に声を上げた。

「?」

ウルズは、その男を見る。
すると、男は

「俺覚えてます!!
初めて奴らがこの街に現れた時、一匹だけすっげぇ身体のでかい奴がいたっすよ!」

「身体が?」

「そうっす!人間の男の数倍はありましたよ!」

「・・・・確かにそれは、普通ではないね・・・」

どうやら彼の話では、最初にゾンビが出現した時一緒にでかい怪物も一緒に現れたらしい。
もしそれが僕が見たあの怪物達と同じならば、
やはり怪物達は全て何かの関連性があるのだろう。

しかし、一体どう言う事だ?

病院の患者が行方不明になり2週間後に、怪物化して帰ってきた言うのか?

患者が既に、何らかのウィルスに感染していたのか?
それとも何者かに連れ去られ、怪物にさせられたのか?

しかし、ウィルスに感染していたとしても、あんな怪物に突然変異するなど考えにくい。

となると、やはり可能性が高いのは後者か・・・・。


ウルズは、そんな事を考えながらラヴィの所へ戻る途中にあるロウソクや、キャンドルの棚に違和感を覚えた。

―・・・?

ウルズはその違和感につられ棚を調べると、棚に最近動かされた形跡があるのを知る。
少し動かしてみると棚は簡単に動き、後ろにあるはずの壁は姿を現さなかったのだ。

―地下室の下に・・・・?

更に部屋があったのだ。
彼は、興味本位で降りていくと、そこには大量の武器庫があった。

―なるほど、こんな状況だ。武器を蓄えるのは普通か。

ウルズはそう思い何もせずに去ろうとしたのだがふと右側が気になった。

―・・・武器庫の隣にもう1つ部屋?

武器庫の隣にある部屋。
緊急用の避難場所だろうか?
確かに武器庫の近くに避難場所があればかなり安全だが・・・・

ウルズは、何も考えずにその部屋のドアノブをひねった。

―カギか。

部屋にはカギがかかり開ける事はできなかった。
こんな弱いセキュリティなどウルズの力なら簡単に壊す事もできるのだが、
今は別にそれをする必要もない。
それに、神父だって人間だ。
人に知られたくない物もあるのだろう
。そう言ったものをこの部屋に隠しているかもしれない。
ならばそっとしておくのが大人というものだ。

「ウルズさん、何してるんすか?」

ウルズが引き返そうとした時、後ろから声が響いた。
その声の主を確認すると、それは先程神父の隣に居た護衛の男である。

「いや、なんでもないよ」

「・・・この部屋。棚で隠されてませんでした?」

「ああ、すまない。何か気になってしまってね。後で棚は戻しておくよ。
・・・ところで、何故隠す必要があるんだい?」

ウルズは、そんな重要な事を質問したつもりはなかった。
しかし、男は何故か慌てたように言う。

「いや、やっぱり武器庫とか教会に相応しくないからじゃないっすか?」

「なるほど。確かにそうだね。では、僕は失礼するよ。」

彼はそう言うとその場を後にした。



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