「軍の方、ようこそおいでくださいました」

指導者らしき人物がそう言うと、ウルズは一礼し挨拶をする。

「では、中へお入りください。そちらのお嬢さんもご一緒に」

そう言われ、ウルズはラヴィを連れ中にはいっていくとそこには、
数名の生存者と怪我をした男が居た。
怪我をした男は、どうやら外の連中にやられたようで腹に噛み傷があり、
それは内臓にまでダメージを与えている様子だった。

それで助かったのは、不幸か幸いか。

医者らしき人物が一人おり、
彼の面倒を見ているようだがここには設備の整った医療器具などはない。
携帯用の医療器具を少し持ち合わせているようだが、
そんな応急処置用のもので彼の傷はどうにかなるようなものではなかった。

ウルズは、その様子と傷の深さから判断して、
彼の命がもう長くない事を察知してしまう。

いや、直ぐに設備の整った医療施設で処置をすれば助かる可能性はあった。
しかし、この状況ではそんな事は絶望的で自殺行為とも言えるだろう
彼を助ける為表へ出れば被害が拡大する事の方が明確だった。

―・・・そのまま食い殺されていればこんな苦痛を味わう事もなかったのかな・・・

ウルズは一瞬そんなことを考えた。
確かに、こんな死への恐怖と直面しながら痛みを味わうのならば、
襲われた時に死んでいたほうが楽だったのかもしれない。

ウルズは、そんな様子を見ながら指導者に話しかける。

「生存者は何名居るのです?」

「15名です。一人負傷者がおりますが・・・・」

そう言うと、指導者はウルズが先程まで気にかけていた男を見つめた。

―子供は、なし。女が3人。男が指導者である彼も含めて12か

最初からこの場に居た15人と、
自分と一緒に来たラヴィも入れて今この場には17名が存在しているというわけである。

「それで、応援は頼めるのですか?」

指導者がウルズに尋ねる。

「外部と連絡がとれるようであれば、可能だ。外部と連絡できるような機器はあるのか?」

ウルズは、そう聞き返すと指導者はなんとも複雑そうな顔を浮かべる。
その様子にウルズは

「ないのか?」

とさらに付け加える。

「いえ、あることはあるのですが・・・・」

指導者は、言葉を濁らせる。

「故障している・・とかか?」

「いえ、繋がる時と繋がらない時があるのです」

「どういうことだ?故障はしていないのに繋がらないなど」

「わかりません。ただ繋がる時もあるので、やってみる価値はあると思いますが・・・・」

ウルズはその言葉に迷わず返答する。

「ああ、その通りだ。機器のある場所へ案内して欲しい」

ウルズがそう言うと指導者は、頷き通信機のあるところへ案内する。

通信機のある場所へ着くとウルズは、直ぐに軍へ連絡を入れる。



ツーツー・・・・

一度目は繋がらない。
雑音は混じっているが、確かに通信機は繋がっているのは間違いはなさそうだ。



又繋がらない。

―・・・・この繋がらなさ、まさか。



ウルズは、耳を澄ます。
雑音の中に混じる微かな音。

―やはりか。

どうやら、この無線機はジャックされている。
どこからかは分からないが、電波を妨げられているようだ。

しかし、まだ微力な妨げであり、上手く繋がる事もありそうだ。
何度かやれば繋がりそうだと判断したウルズは更に、通信を試みた。



「はい、こちらは―」

―繋がった・・・!

ウルズは、そう言うと手短に用件を述べた。

「こちらはイーグレット・ウルズだ。緊急事態だ。応援要請を頼みたい」

ウルズは、救援を頼もうと思い要請したのだが

「いえ、でも一昨日既にそちらに6名向かいました。
今は手の空いてる者が居ない為そちらに救援を送れるのは最低でも3日後になります」

「3日後・・・?それに、6名既にこちらに向かっているだと・・・!?」

これは非常にまずい。
一昨日と言う事は、もうそろそろ此方につく頃だ。いや、既に着いているかもしれない。

この状況に、何にも知らない人間が6名も来ることになる。
人間が6名もきた所で、奴らの餌食になるだけなのは明らかだ。

―しかし、スリサズやアンサズならば・・、この状況生きながらえるはず。
ここへ来る前に、あの2人も同任務を受けていた。
ならば6名中2名はアンサズとスリサズか。

では、残りの4名は?

ウルズの頭に一番の不安がよぎった。

当初は、ベルゲルミルの故障が原因で応援を呼んだのだ。
と言う事は、最低でも1人は整備士と言う事になる。
ベルゲルミルは、普通のPTとは仕様が違うから
ナノマシンの知識が有る者1人、整備士1人と考えて
少なくとも2人は技師だ。
では、残りの2名は・・・・

―・・・頼む、来ないで・・・

ウルズは、頭の中によぎる不安を必死に隠しながら通信を続けた。

「・・・ですので、応援はもう少しあ・・・・」

通信に雑音が大量に混じる。
どうやら、限界らしい。
雑音が、徐々に大きくなり完全に通信は途切れ雑音だけが無線から聞こえるようになった。

「・・・・くっ!」

ウルズは、無線機を置く。
応援の返事を聞く前に、通信が途切れてしまったのだ。
再度通信を試みるが、完全にジャックされ何も聞こえない状態になってしまった。

―外部との連絡を取った事が気付かれたのか・・・?

ウルズは確認する為に、後ろで待機していた指導者の男に尋ねた。

「この近くに電話会社などはあるのかい?」

「ええ、ひとつだけあります」

ウルズは、ふむと考えた。
無線が電話会社と繋がっている可能性はあまりないのだが、
電話線が停まっているという事実に重点を置いてみた。
通信機器を、簡単に統べるのならば電話会社がある程度機器も揃っていて簡単だろう。

「わかった。ところでこの状況と外の連中の事何か知らないのかい?
出きれば分かることをすべて教えて欲しいのだが」

ウルズは指導者に、情報収集のため確認することにした。




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