あの外で動めく人の形を成すモノ達が、なんらかの原因で変貌した人間達の成れの果てだというのなら
今ここで茂垣苦しむ怪物も、元は人間なのかもしれない。

本当はそんな事考えたくもない。

しかし、彼女が身につける衣服などを見れば、それは彼ではなくとも簡単に想像がつくだろう。

―・・・・聞いたことがある。
世界には、妖怪や魔物という物語の中にしか存在しない空想の生き物が居るという話を。

それらは自然に生まれた生き物だという。物語の中の話だが。

人間の形をしているが、本当はまったく別の存在。
人間に化けた化け物。
人に似ているだけの怪物。

全て人間とはまったく別の存在だ。
もし彼女も、それと同じだったらどんなに楽な気持ちになるだろう。

けれど、恐らく今目の前に居る彼女は、きっと・・・・


「・・・きっと、元は人間・・・・・」

ウルズはそう呟くと、ナースの息の根を止め、楽にした。










「ラヴィ、大丈夫かい?」

ウルズは、瓦礫を退けラヴィに声をかけた。

「うん、へいき」

ラヴィはそう言うと、にこりと笑った。
もう夜明けは近く、朝日も昇り始めていた。

ラヴィは、大きくあくびをする。

こんな小さな子供が、夜通しこんな危険な場所を歩いたり、走ったりしたのだ。
もうそろそろラヴィの体力も限界に近い。
疲れきっているはずなのに、そんな仕草は全く見せずウルズが声をかけると笑顔でウルズに答えてくる。
幼いながらも、この状況とウルズの事を気遣っているのだろう。

―・・・・夜明けか。

ウルズは上り始めた朝日を見ながらそう思った

暗闇の中の恐怖もラヴィにとっては異常なまでの恐怖だっただろう。
目に映らない恐怖が彼女を襲ってくるのだ。それは計り知れないほどの恐怖だろう。

しかし、日が昇ったことで彼女の目が利くようになった。
今度は、恐怖がそのまま目に映りこむのだ。

目に見える恐怖と、目に見えない恐怖。
どちらが恐ろしいのだろうか。

病気や、偶然起こりうる事故とは違う目に見えない恐怖ではない。
謎の怪物が暗闇で襲い来る恐怖だ。

そんなもの、誰もが測れるわけはない。


「ラヴィ、大丈夫かい?」

瓦礫を退けたウルズが、先に窓から飛び降りる。
そして、振り返りラヴィに手を上げ、

「さあ、飛び降りてごらん、大丈夫だ。
僕がちゃんとキャッチするから」

ウルズが、そう言うとラヴィは目を閉じてジャンプする。
そして、ウルズはラヴィに言ったとおりしっかり彼女をキャッチした。

「おにいちゃん、ありがとっ!」

「当然だよ。さあ、奴らが来る前に行くよ」

ウルズはそう言うと、ラヴィと一緒に教会を目指した。


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