「0時23分か。目的地に着くのは夕方くらいになりそうね」

アンサズが、つまらなさそうな顔をしながらリズナに返事をした。

「夕方かい。確かウルズは、森の中でベルゲルミルが故障したんだろ?
夕方だと修理するのが夜明けを待ってからになりそうだねぇ」

「そうね。森の中じゃ夜は真っ暗だろうし、細かい作業は厳しいだろうから」

リズナは、そう言うと窓の外を見る。
今は、太平洋上空の真ん中で、下には海が見える。

「明かりがないから、真っ暗ね・・・・。」

「そりゃそうだろ?海の上だからな」

スリサズが、素っ気無く答える。

「あー、そうだ。聞きたい事があったんだ」

「何、アンサズ?」

「整備士の護衛とか言ってたけど、本当は研究所の施設に派遣されるんだろ?」

「・・・・なんで知ってるのよ」

その言葉にスリサズが

「そりゃ、すぐわかるさ。たかが普通の整備士に、護衛なんかつくわけないだろ?超エリート整備士ならともかくさ」

「そう。それにただの整備士と君じゃあ、どっちかって言うと君の方に護衛がつくのが妥当だろう?
認定上唯一の念動力を自由に扱える存在で、神動機ヴァルキュリアのパイロットなんだしね」

神動機というのは、クラスチェンジが可能になった魔動機の総称である。
ヴァルキュリアとリズナは先の大戦でクラスチェンジを見事使いこなし、
戦争を勝利に導いたのである。

「はぁ、あなた達の情報収集能力と、判断力には毎回恐れ入るわね。
そうよ、私もあなた達と同じ研究施設の護衛候補に名前が挙がったの」

「なるほどねぇ。念動力を自在に操って、戦闘できるんじゃ候補に挙がるのも頷けるね」

「なんだよ、ウルズに会えるからてっきり自分で立候補したんだとばかり思ってたよ」

「・・・・命令拒否は出来たわ」

―命令拒否?
・・・・僕たちのときは、命令拒否は出来ないと言われたのに・・・・?

アンサズは、リズナの言葉に疑問を残した。
そして、リズナに尋ねる

「なんで拒否しなかったんだい?」

「あの施設は、色々黒い噂が多くてね」

「ふーん、なるほど。」

「私も色々と気になる事があったのよ。
軍のトップシークレット…。探り入れる良い機会だったのよ」

そう言うとリズナは後ろにある自分の寝場所に戻っていった。
その様子を確認したアンサズが、スリサズに話しかける。

「やっぱり名前が挙がってたようだね」

「ああ。命令拒否しなかったのは、リズナ個人的な問題だろうけど、
なんで拒否権があったんだ?
僕らにはなかったはずだぞ?」

「人間・・・と、人造人間の違いか、それとも別に理由があるかのどっちかだろうねぇ」

「なるほどな。戦闘用や人間に使役されるのが目的で作られた奴には、拒否権は用意されてないって事か。
まあそれなら別にいいさ。そんな扱いはもう何千年も前からだしね。
けど、別の理由っていうのはなんだ?一体何がある?」

アンサズが、少し考える。

「・・・・彼女の能力は軍にとって凄く貴重だと思わないかい?」

「? なんだよ、急に?確かに、サイコキネシスやら、精神感応やら、複数の能力を使いこなせる奴なんか
1000万人に居るか、居ないかくらいだろうけど・・・・」

「使いこなせるだけじゃない。戦闘訓練もつんだプロフェッショナルだよ?
しかも、挙句の果てに操縦者を選ぶ最強の魔動機の操縦者だ。
こんな人間世界中何処を探したって、彼女しか居ない。」

「・・・・代わりが居ないってことか?」

「そうさ。彼女の能力は、異常までに高いから出きれば研究データとしても欲しいだろう。
けれど、彼女に死なれるのはもっと困る。だから拒否権があったんだよ」

「ちょっと、まて!これは、護衛任務だろ?」

スリサズが驚きアンサズに確認する。
すると、アンサズが真剣な表情をして答えた。

「表面上はね。けれど、僕ら3人を呼び集めて、ベルゲルミルを置いてこいって言うんだよ?
リズナだって言っていたよね。最近の軽犯罪だって起動兵器が普通だって」

「ああ・・・。今じゃ何をするにも起動兵器を使うのが常識になってる・・・」

「ならば、普通起動兵器は置いて来いなんて言わないはずだろう?
何か狙われているなら、相手だって起動兵器を持ってくるはずだし。
と言う事はだ。必要なのはベルゲルミルではなく、僕達なんだよ」

「・・・・じゃあ、これは・・・・」

「そうさ。起動兵器の戦闘技術だけならアスミや、ケンタ達だって十分なはずだ。
なのに僕達をご指名なのは、僕達の人間より桁外れた戦闘能力が目的なんだよ、彼らは」

「僕たちに拒否権がないのは、人造人間であるため死んでも問題ないって言うのと、
もう1つは・・・・。人間にはない戦闘能力か・・・」

「ああ。きっと護衛任務ではなく、何かの実験だろうね。通常の人間では測れない程の・・・」


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