ウルズは、人の形を成すモノから逃れる為とある民家へ入り込んでいた。
民家は、灯りもなく誰も居る気配がなかった。
・・・・・だからこそ、入り込んだのだが。

「・・・」

ウルズは、民家の居間に居た。
居間には、机が1つ、椅子が3つあった。
しかし、ただ置いてあるわけではない

椅子は、倒れ机の上に食べ残しの料理が置いてあったのだ。
しかしただ食べ残したという雰囲気でもなかったのだ

スープや飲み物がこぼれており床にスープが広がっていて、
パンやおかずは床に散らばっていた。

「襲われたのか・・・?」

ウルズはそうつぶやいた。

食料は既に腐敗を始めている。
ここ2,3日の出来事ではなさそうで、最低でも1〜2週間は経っているだろう。

ウルズは、窓を見る。

ウルズの予想通りその窓は割れており、風が吹き抜けている。

どうやら犯人はこの窓からこの民家に侵入し、この家の住民を襲ったのだろう

「一体誰が・・・」

ウルズはまたそう呟くと、その窓から外を見たのである。
外には、大量にうろつく人の形を成すモノが遠くに見えた。
まだウルズには気付いていないようであり、距離にして500メートル以上はあるだろう。

今この時点で一番犯人になりえるものは、あの人を形を成すモノたちだった。

ウルズは、考える事も色々あったがこの場所もそう長くは安全ではない。
もっと、安全を確保を出来る場所と、外部と連絡できる場所を探す事を優先する。





そうしてウルズは、古びた病院の前まで来ていた。
かなり大きい病院で、築30年といった所だろうか。

外に居るよりは多少は安全だろうが、内部が安全だとも言い切れない。

しかし、軍へ通信するには野外に居るわけにも行かなかった。
どこか、電話か、無線のある場所を探さなくてはならない。

ここに来るまでいくつかの、店や施設に入ったが何処も繋がっていなかった。
荒らされた形跡のある場所、何事もなかったかのような綺麗な場所もあった。
しかし、そのどちらも電話線は繋がっていなかったのだ


民家に入る前の出来事だが、
あまりにも綺麗過ぎる店に入ったとき、電話線だけが繋がっていないのかと不振に思い電気をつけてみた。

どうやらウルズの予想は当たっていたようで、電気は普通に灯りその店はとても明るくなった。
電気がつくと言う事は、水も出るのでは?と、試しに蛇口を捻ると案の定水も普通に流れ出たのだ。
勿論も、ガスも同じだった。

電話だけが繋がらない。
これは明らかに外部への通信を絶っている。

一体何のために・・・?

ウルズは、外を見上げた。電信柱が壊れている様子は周囲にはない。
・・・電気が繋がっているのでその可能性は少ないのは分かっていた事なのだが。


――明らかに通信機器だけを狙って止めている・・・。

病気や、ウィルスの可能性を重点に考えていたが、どうやら他者による可能性も十分になってきたね・・・

ウルズはそう思うと、無線機などを探す為院内に入っていった。


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