―・・・遺跡?

それは、建物だけは壊れているが
周辺は花が咲き乱れ美しくも
異様な光景を保っている。
そして何かは分からないが、
その花達にはまた違った違和感があった
ウルズの人間を凌駕する視力ではその様子が
よく観てとれたがその違和感が何かまでは予想がつかなかった

そこへヨシマが食事を持って入ってくる。

「おやおや、外が気になるのかい?」

するとウルズはちらりとヨシマを見て、彼女の質問には答えず、
謎の建造物について尋ねた

「あの建造物は?」

「あの建造物?
もしかして『遺跡』かぇ?」

「・・・・遺跡?」

「そうじゃよ。凄く不思議な所なんじゃ。
あの場所では木も花も、
季節や昼夜構わず
ずっと咲いておる
凄く美しい場所なんだよ」


―・・・・なるほど。

違和感の謎が解けた。
この季節に咲く筈の無い花があの場所では咲いている。

それが違和感の正体だ。

「ウルズや。
もし元気になったら、あの場所に行ってみるかのぅ?」

「・・・それはどういう意味だ?」

「一緒に見に行こう
って意味じゃよ」

―・・・僕と、一緒に・・・・?

この女…
さっきからおかしな事ばかり…
何を言ってるんだ?
元気になど、なる筈無いのに・・

「それじゃあわたしゃ、買い物に出かけてくるよ」

そういうとヨシマは持ってきた食事をテーブルの上に置く。

「少しでも良いから食べておくれ」

ヨシマはにこりと笑い、
部屋を後にし、買い物の仕度を整え出掛けていった。

テーブルの上には、
温かいシチューと温かいミルク。
普通の子供ならば
喜んで御馳走になるのだろう
だが、彼は普通の子供ではない。
彼は御馳走をちらりと
横で見るだけで手をつけようとはしなかった。

シチューとミルクの湯気は次第に少なくなっていくシチューとミルクの湯気がなくなる程の時間
彼はずっと空を見ていた。


彼の瞳には何もない。
移るモノはただそこにあるモノだけ

守るべき物など
もう彼の瞳には移らない。

―彼らに敗北したあの時から。

それ以前は
この星と言う
守るべき物があった

けれど今は・・・


その時だった。
彼は空から到来する異変に気づいた。

―――――――?

「!?」

その異変は徐々に
こちらへ近づいてくる。
彼はその異変の正体に
誰よりも速く気づいたのだった


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