「…ウルズ、あんた…」
―この人も、同じだったんだ。
ライクレット様と同じように本当にこの星や世界、生きる者達のことを考えて…
そっか。
私、間違ってたんだ。
私の命はもう僅かの時ライクレット様に助けて貰って、
それからライクレット様と過ごして、あの人の考えは間違ってないと思った。
考えは間違ってないと思っても、やり方は見てられなかった。
けれど、ライクレット様の為になりたいと思うばかりにそう思っていてもずっとそれを見てみぬ振りしてきた。
でも、それは違ってたんだ。
あの人を思うからこそ、間違って居る事は正してあげないといけなかったのかもしれない。
なのに、私。
嫌われたり、捨てられるのが怖くて、そんな事考えもしなかった。
「ウルズ」
レイティスは、涙に濡れた声でウルズの名前を呼ぶ。
「…なんだい?」
「今からでも、それは間に合う…?」
「ああ。勿論だよ。遅すぎるなんてことはない。命さえあるのなら、遅すぎるなんてことはないんだ。
気付いた時に、始めれば良い。それは人間も、僕らも、神様だって同じことだよ」
レイティスは、此処に来て初めて笑顔を見せた。
本当に彼を仲間と、認めた笑顔。
「さあ、帰ろう?
君が居ないと、整備がつらい。アイリスを取り戻したら、みんなでまたお話しよう」
ウルズは、レイティスに手を伸ばした瞬間だった。
それは、突如空間に開いた歪みからだった。
ウルズが気付いた時にはもう遅い。
一瞬の出来事だった
レイティスの乗るヴィーナスの胴を光の刃が貫いていた。
「レイティス!!!!!」
ウルズが気付いた時には、既に時は遅くヴィーナスから火花が散っていった。
爆破寸前のヴィーナスは、ベルゲルミルに手を伸ばし
「…ウルズ。ちゃんと、後ろはみないとダメでしょ…?」
ウルズのベルゲルミルの後ろに開いた空間の歪み。
アンサズやリズナが気付いた時にも既に遅かった。
その変化に気付いたのは、ウルズと対峙し向かい側にいたレイティスだけだったのだ
「レイティス、なぜ!なぜ庇ったんだい!?」
「あんたがとろいからよ…」
ヴィーナスに開いた穴から、火花と共に水色の光が溢れだした。
光は徐々に彼女を蝕んでいき彼女の機体も、身体も淡い光に変化し消えていく・・・。
「ライクレット様を、更生させてあげたかったのに、もうそれも出来ないみたいね…
けど、これでよかったのかな…。光になったら、"本当に、ライクレット様の役に立てる"んだもの・・・」
「レイティス、何言ってるんだい?!」
「ふふふ、気にしないで。それより、ウルズ…、絶対姉さんを助けてね。
それから、この星に生きる命も、世界もよ、絶対だから…ね」
レイティスは、彼を見て笑う。
そして空間の歪みを見て、こう呟いた。
「ライクレット様、ごめんなさい…」
そう瞳からひと粒の涙を流し、レイティスは水色の光へと変化した−…
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