そうして、私達はライクレット様に新しい命を授かった。
その後私は、自分の意思でこの記憶を残し、任務を授かった。
「世界を監視?私達が?」
「正確に言うと、君が・・ね」
ベッドに横たわる姉を見つめた。
「彼女は以前の事を何も覚えていないから。この任務は君が主に行なう事になる。
そうだね。彼女は人間達と上手く接して貰って観察する事にしようかな」
「わかりました・・・」
「多分、これから酷く辛い事が沢山おきることになる。」
「酷く辛い事・・・?」
「そう。人と人が憎み合い、傷つけ合い、殺し合う。」
「・・・」
「それでも君はじっと、耐え世界を見守るんだ」
「何もしなくて・・・いいの?」
「良い。それは僕達「神」の役目だから・・・・」
この時は思いもしなかった。
私達の兄弟が、人類を絶滅させ、地球を再生しようとしていたなんて。
しかも、その後に更正した兄弟と旅をする事になるなんて
世界は腐っていない――――
本当は人間は優しい生き物―――
彼らに出会って分かった事。
少しだけど、大切な事。
かつて兄弟が犯した過ちは、人間にとって大きい。
でも、人間がその前に犯した罪も大きい。
ライクレット様は、世界を愛している。
だから、「世界」の為に、新しい世界を作って再生させようとしている。
けれど・・・
このやり方は正しいの?
「世界」だけを再生させる遣り方は「正しい」ものなの?
これじゃ、かつての「先住民」達とおなじだ。
だから?
だから、彼らは必死に抗うの?
きっと、そう・・・・・
決意と、決別。
それを自分の心に刻む覚悟をして、人形識別名称ジェラ・・・いや、レイティスは立ち上がる。
その瞳には、自分を助けてくれた「あの人」が映っていた。
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