真実を求めて。
アイリスは、神々が住まう居空間のとある場所に閉じ込められていた。
そこは、薄暗く何もない。
冷たく、無音で、自分の吐息だけが響く。
「・・・・私は・・・・」
「人形」
レイティスに言われた言葉が頭の中を支配する。
彼に出会い、彼に惹かれ、彼と約束を交わしたその瞬間まで
彼女は自分の存在に疑問など感じなかった。
例え、自分が愛する相手が 「ヒト」でなくても。
しかし、自分の正体を聞かされた途端、それは音を立てて崩れ落ちた。
「あの人」は人間じゃなくたって構わない。
「あの人」は「あの人」だから私はそれで良い
だけど・・・
いざそれが自分の身になると、事態は一変した。
違う。
違うの。
自分が人間じゃなかった事なんてどうだっていいの。
ただ・・・、ただ・・・
自分が人間じゃないって聞いた途端、人形だって聞かされた途端。
自分の存在は、偽りだって、異物だって思ってしまった自分が嫌なの・・・
だって、それは・・・
あの人の存在をも否定してしまった事になるから・・・・
[ 141/240 ]← →
INDEX
[しおりを挟む]