ドームの外壁にひびが入る
鳥はさらに体当りを外壁にぶつけ
嘴でそのひびに穴を空けドームの中へ進入に成功する

ヨシマの家は街から離れたところに位置しており
街に行くにはかなりの時間がかかる場所にある。

「あの女。あんな遠くまで…」

ウルズはぼろぼろの体で
街を目指した。
街では、
民間人が進入して来た鳥に逃げ惑い、
大混乱を起していた。

「ママーッ!ママー!どこー!!」

「くそがきッ!
邪魔だ!!
ささっと逃げねーと喰われちまうぞッ!」

「ま、ママー!!
ど、どこ・・・・にいるの・・・
ヒクッ・・・ふええぇん」

「ちっきしょおおお
こんな奴に食らわれてたまるかああああッ!!!!!」

民間人の一人がMSに乗り込み、
鳥に立ち向かうが、
鳥の圧倒的な強さでそのMSをなぎ払う。
民間人が自棄になり次々と機動兵器で立ち向かうも、
発掘され間もない機動兵器ではOSも無茶苦茶でまともに動くはずもなく次々と倒され、
コクピットを向き出しにされた物は次々と捕食されていく。

次に一人の男の乗る
ボールの様なMSが狙われた時下から声が響く。

「パパー!!」

「バカッ!くんな!!!!」

父親は子供を助けるため、
ボールのようなMSで庇うがその装甲は破壊され
またもや操縦席が向きだしになる。

「パパーッ!!!!パパーッ!!!」

「逃げろッ、早くッ!!!!」

鳥はそのMSに一直線で跳んでくる。

「逃げるんだ、はや・・・ッ、
うあああああッ」

「パパあぁぁぁぁぁっ!!!」

子供は泣き叫び、
身動きが取れなくなってしまいワンワン泣き喚く。
すると母親がそこへ駆けつける。

「早くなさい!!!!こっちよ!」

「ママ!
パパが・・・パパが・・・!!」

「いいから、早く来るのよ!
パパは大丈夫だから、ね!?」

鳥がやってくるが、近くに居た民間人の駆るPTが鳥を狙い撃つ。

「今だ、あんた達早く逃げろーッ!!」

「ありがとう、さぁいくわよ!!」


「でも、パパ…」

母親は子供の手を引っ張りその場から去ろうとするが
後ろで鳥に落とされたPTが倒れてくる
母親はその倒れてくるPTから子供を庇い下敷きになる

「ママ?ママ…?ママッ!!!」

子供は両親を一瞬にして失ってしまった。
そんな重い状況が小さな子供にとても堪えれる筈もなく、
その子はその場に座り込み、
笑って恐怖と悲しみを紛らわした

「っは、はは、っはは…
ママ?
ママ、そこに居るんだよね?
・・・・パパもそこに・・・居るんだよね
…返事、返事して…
ねぇ、返事してよッ!」

ついに鳥が少年に気づき、こちらへ向かってくる。

「ママ・・パパ・・・
あ、はっ…はは、ははっ…ハハハ」

少年は膝を付き一歩も動こうとしばかった。
ただ狂ったように笑っていた。
その瞳には大粒の涙が零れている

「何をしている?死にたいのか?」

そこへ現れたのはウルズだった。
彼にはその少年が何故その場で
そんな事をして居るのか知った事ではなかった。
そして冷たく言い放つ

「・・・・君がどこで死のうと関係ははないんだけどね。
そこに居られると邪魔なんだ。
どいてくれないかな」

ウルズは辺り一帯を見回す。
すると丁度誰かが乗り捨てたPTを発見する。

「邪魔になる。
さっさとどこかへ行く事だね」

「ママ、パパ…ママ…パ…
お兄ちゃん、お兄ちゃん、聞いてッ
ママが、ママがね!
ママがその下に居るの!
助けて、助けて・・・・・!」

「その下?」

ウルズは子供の指差すほうを見ると
赤く染まった大地があった。
それは子供の母親はもう助からない
と言う事を誰もが理解できる。

ウルズはそんな場所を見て、思わず

「あいつを倒してから…助けておくよ」

「ほ、ほんと!?
ほんとだからね!?」

「・・・・ああ・・・」

少年はウルズににこりと笑うと
他の人々が走っていくほうへ走り去る。

勿論、助けるなんて
その場しのぎの偽りだった。
助けた所でもう母親は死んでいる。
しかし
もし今の子供にそれを伝えたら
子供は絶望し逃げる事さえ拒んだろう


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