その頃だった。退院を間近に控えた大地は、両親と共に病室で準備していた。
しかし、何処となく両親の表情は重く、あまり退院を喜んで居ない様子だった。
それは、大地が時折、聞こえる謎の声に原因があった。
両親は大地が謎の声に苦しむことを考慮しもう少し病院で様子を見て欲しかったのである。

「大地、やっぱり先生に相談してみましょうか」

母親が心配そうに言うと、大地は

「いいよ、かーちゃん。うちには兄ちゃんも居るし大丈夫だろ」

「でも…」

「心配すんな…って…」

大地は、母親に心配しないように言おうとするがまたあの声が彼の中に響いた。
本当はここ最近謎の声が聞こえる頻度が上がっている。
だが、皆に心配させないように黙っていたのだ。

−ちきしょう、またかよ…。誰なんだよ、お前…!

『汝、貫く強さ持ちし者…、それを証明して見せよ』

−意味わかんねえよ、何言ってんだよ、お前!

『壮大な壁、立ちはだかりし時、汝はその試練をどう乗り越える』

−貫く事だとか、試練だとか本当に何なんだよ!!

『…けて…』

−…違う、声?

『…僕らは本当は要らない人間なんだ…。みんな僕らを嫌って、疎む…。
だから、だから、そんな世界要らない…』

−なんだよ、それ…

声は徐々に小さくなり聞こえなくなってしまった。
大地は、母親を心配させないよう微笑んだ後、隣りの患者が見ていたテレビをちら見する。

「…またあの国の連中の侵攻かよ。ケンタはまた戦ってるんかな」

そう呟き、荷造りを進めるのだった。


「全部全部、お前達のせいだッッ!」

「それは…っ」

言葉に出せない。
あの事件、あの実験、誰も幸せなんかになれなかった…!!

そんな時、ファレグが日向に言った。

「お前達は勘違いしている。お前達が追放された後、その施設は事故でなくなっている。
勿論、施設にいた子供達も皆死んだ。アイカワを残して全員な」

「へぇ。みんな死んだんだー…。それは良いねッ!
殺す手間が省けたよ。じゃあ、やっぱり後はこいつだけだね…ッッ!」

日向はそう言ってシャドウサイズを振るう。
その猛攻をかわすリズナは、何か言いかけてはやめ、何か言いかけてはやめを繰り返す。

「どうしたんだよ、ケイパブルチルドレンッッ!
言いたい事があるならはっきり言えよ!!遺言くらい聞いてやるからさぁッッ!」

リズナは戸惑っていた。
勝手な事だと言う事は分かっていたが、出来る事なら彼らを救いたい。
その為、彼女は本気で戦う事ができずにいたのだ。

シルフィーと交戦するルシフェルは、
シャドウに押され気味のソールフリューゲルを見てどう支援に行くか
頭の中で作戦を練っていた。

−対抗する為に作られたA級とは言え、分が悪いな。さて、どうする?

「邪魔…。早くそこを退いて…」

そうシルフィーに乗る少女が言って、風来の扇をかざす。

−…そろそろ、来る頃のはずだが…

ファレグが、レーダーを確認すると3機の熱源反応がこちらへ近づいていた。

−ようやくか。

そう言ってファレグが一歩後ろへ退くと、直ぐ横を煌く水流が通り抜けた。
それは、シルフィーに見事命中し、彼女の身動きを止めた。

「遅いぞ、お前達。」

「仕方ねえだろ?こっちの方も一杯居たんだからよ!」

威勢の良い声で、ルシフェルの横に着ける炎の魔動機イフリート。
それに続く、ウンディーネ、ノーム。

その様子を確認した、アクアマリンは

「…あら、もう向こうの雑魚達は終わってしまいましたの。
これだからただの改造兵士は役に立ちませんのよ。
月影、今日はこの辺にして帰りますわよ。数では分が悪いですわ」

「はあ!?何を言ってるんだよ!?
もう少しでこのケイパブルチルドレンを倒せるのに…!!」

「私はそんな執着よりも、確実を重視するタイプですの。
今回は私の指揮下ですわ、命令には従って貰いますわよ、出来損ないさん達」

アクアマリンは、月影に撤退命令を下し、先に飛び立ってしまった。
それを、下打ちしながら追う日向。その後ろに美影が彼を追う。

リズナはそんな、2人の後ろをただ黙って見つめていた。


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