ここは、東京湾に面する地域だった。
あの後緊急出動要請が、出され彼らは東京湾へと出動していた。
任務の内容は、東京湾で大きな影が出現し直ぐに消えたと言う。
ビーストの可能性もある、調査の為エレメンタルナイツの面々に出動要請が出されたという訳だ。

現在、この地域の海を監視するのはアスミ、ウルズ、スリサズ、アンサズだ。
目撃箇所が数箇所合ったため、何グループかに分けて監視に当たっている。

「…」

いつもは騒がしい少女は、今日は黙りきりであった。
スリサズもアンサズも気にして居ないようだが、ただ一人ウルズだけは彼女の事を気にしていた。

「…アスミ」

そう少女に声をかけた。

「…ん、何?」

アスミが彼の声に気付き、返事をする。
その返事はいつもの、元気の良い返事とは違ったものだった。

「体調が良くないのなら、早めに言ってくれ。後は僕らだけで作業するから」

「大丈夫よ〜、そんな気にしないで。」

「本当かい?なら良いのだが…」

「うんうん、心配してくれてありがとね!」

ウルズに、そう返事したアスミはモニターを海岸の方へ移し、

「ほら、任務、任務!」

ウルズは、無理に明るくするアスミに対し何か言おうと思ったがそこへスリサズが口を挟んだ。

「フン、何も居ないじゃないか。どうせ浅瀬に迷い込んだ鯨か何かだろ、こんなの意味ないね!」

スリサズが、言うとそれに続いてとアンサズも

「確かに何の被害も出てないんじゃあ、そうかもね。
人間はとんだ臆病者だよ、たかが大きな影に怯えてここまで大騒ぎするんだからねぇ!」

言いたい放題言う2人に、ウルズは

「お前達、任務に集中するんだ、万が一と言う事もある」

「ウルズはお利巧さんだねぇ。こんな人間どものお遊びに付きあっちゃってさぁ」

「アンサズの言う通りだよ。何もない平穏な海じゃないか。大げさすぎなんだよ、人間どもは!
いや、大げさじゃなくて、愚かの間違いだったかな、ハハハ!」

スリサズとアンサズの言葉を黙って聞いているアスミ。
ウルズはそんな彼女の謝罪の言葉を述べた

「すまない、悪い気分にさせた。」

「2人はいつものことだから、大丈夫だよ!
…ただリズナの前じゃなくて良かったね、また仲悪くなっちゃうかも…」

リズナと言う言葉にウルズは顔を曇らせた。
あの少女とは、スリサズとアンサズが調整から帰ってくる度に険悪な雰囲気になっており、
その中立の立場を保っているウルズからしてみればその状況はとても良い物とは言い難かった。
リズナとは、もっと話をして彼女が何を考えているのか知りたかったが、
彼女はマシンナリー・チルドレン3人全員にあまり良い態度を示してはくれていない。

「…アスミ」

「ん、どうしたの〜?」

「リズナが、僕達をどう思っているか聞いた事はあるかい?」

「えっ…。」

アスミが言葉を詰まらせた。
それはアスミも、未来の彼らの事をリズナから聞いていたからだ。

「え〜…っと.、なんて言うか…」

良い言葉が思いつかず沈黙してしまうアスミ。
そんなアスミにウルズは、あまり良くない事だと判断した。

「…僕の事は気にしないで良い。出来れば、正直に答えて貰えると有難い」

正直…そんな事言われても困る。が、アスミの素直な感想だった。
未来世界でウルズ達が人間と根絶しようとしたなどと、言えるはずがない。
未来世界でどうこうとか、それでさえ信じがたいのに。
彼らが人間を全滅させようとしてたなんて本人を前にして言えるわけがなかった。


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