「…そうですね…。
追放されても辛かったでしょうが、そのまま追放されず研究所に居ても…」
ワカバがそう言うと、ケンタが
「…ケイパブルチルドレンが居なかったら酷い目に会わなかったって…
あいつらも孤児だったのかな…。そんで辛い人生を歩んできたんかな…」
「…それで、ケイパブルチルドレンを恨んでる…。
なんか、私あの子達の気持ち少し分かるかもしれない…」
アスミが、悲しげな表情で言い、その後リズナを見つめながら言う。
「リズナ、あの子達に研究所で起きた事故を教えてあげたらどうかな?」
その言葉にリズナは思わず顔を上げた。
「そ、それは…」
言葉に詰まる。
アスミはそんなリズナに続けた。
「研究所に居ても、酷い目に合ってたって知ればあの子達も多少楽になるかもしんないよ!?
リズナだって、酷い目に合わされたんだよね!?だったら、教えてあげれば…!」
アスミの提案に、リズナは言葉が出なかった。
研究所で起きた事件は、研究員が作り上げた嘘。
本当はもっと悲惨で、無残な研究で子供達は…
「…でも、私は生きてる」
「…! リズナ…」
リズナから、出た儚く小さな言葉にアスミが思わず彼女の名前を呼ぶ。
そして、彼女は小さな声でこう続けた。
「生きてる私がそんな事言った所で何の説得力もないわ…」
「リズナ、お前何そんな顔してんだよ!?
あの研究所で起きたのは事故だろ!?お前は、運が良かったんだよ。そんな顔すんなよ…」
ケンタが精一杯の言葉でリズナを慰める。
ワカバもそれに続いた。
「そうですよ、リズナさん。元気出してください、あれは不幸な事故だったんでしょう?」
2人は、あの研究所で起きた事を何も知らない。
確かに、事故で起きた事ならば皆同じ台詞で励ます事だろう。
だけど、私はあの事の真相を全て知ってる…
そんな私が、あの子達に何を言えば言いのだろう…
きっと、研究所に残った所で、あの子達も実験に巻き込まれていた。
研究所に残ったら、絶対に死んでいた。
それは間違いないのに…
あの研究所で実験台にされ死ぬ事と、あの子達が体験した出来事。
どっちが重いのだろう。
そんなもの秤にかける事自体間違って居るのだろうけど…
私には、分からない…
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