ここはブリーフィングルームだ。
目の前には、大きなモニターに顔を隠した科学者が数人通信をつなげている。
そしてそのモニター横には若い女科学者が立っていた。

「ふむ。それでルベウス中尉、状況を」

モニターの向こうにいる顔を隠した男が言う。
その言葉にファレグが前回の戦いのデータを読み上げた。

「やはり、S級のシャドウとシルフィーに間違いなさそうだわね」

モニターの向こうの科学者の1人がそう言うとまた1人がこう言った。

「魔動機は、S級のミスティック能力が異常だからな。
下位ランクや上位ランクのミスティックはSに効き目が殆どない」

「ええ、これは今後の開発で対策をしないといけないだわね」

そして真ん中に座っている一番立場の高いと思われる科学者がこう言う。

「ああ、ストレートと、アップルの言うとおりだ。
しかし今のはミスティック耐性の話でな。オレンジペコ説明してくれ」

もっとも位の高い男がそう言うと、モニターの横で今まで黙っていた女が喋りだした。

「あ、は、は、はいっ!
え、えっと…、ダージリンが言っていた通り今のはミスティックの話でして…」

このきょどりながら話しだした女は玉露月牙と共に
現在この基地に滞在する魔動機開発協会の科学者の1人だ。
この魔動機開発協会というのがなかなかの曲者で殆どがその存在と顔を知らない。
何故隠しているのかは定かではないが、現在顔を公表しているのは
今の目の前にいるこの女と、玉露月牙のみだった。

そしてオレンジペコや、ダージリンなどの紅茶に関する言葉はこの科学者達のコードネームである。

「オレンジペコ殿、少し落ち着いてください」

ファレグがそう言うと、オレンジペコという女は少し涙目になっていた。

「ゆっくりで構いませんので」

「あ、はは、は、はい!
えっと、ですね…。
ミスティックは精霊さんの力で使用してるんですが…
詳しく説明すると長くなるので…すが…、
精霊にも強弱の属性があったりなかったりするんです。」

黙って聞いているファレグの様子をおそるおそる確認するオレンジペコ
そして彼の顔色を伺いつつ話を続ける。

「たとえば、炎の精霊には水の精霊が優位になり、
水の精霊には地の精霊が優位に。
それは、格上の精霊であっても同じ事で、
高位の炎の精霊に、上位の水の精霊のミスティックが通じる事もあるんです」

ファレグがその説明を理解し

「なるほど…」

と呟くと、オレンジペコは何故かきょどりはじめる。

「すすすみません…!判りにくかったでしょうか…?」

「いえ、とても参考になります」

ファレグがそう言うと、オレンジペコが少し安心したように話を続けた。

「それで…ですね。
強弱の関係と、精霊の加護なんかは精霊同士だけの話で、
物理的に強力な武器なんかであればS級にも普通に戦闘が行えるんです」

「前回の大戦では、
PTやMSが魔動機と対等に戦闘をこなしていましたね」

「は、はい。
魔動機は精霊に加護を貰えば強力な能力が使用できる代わりに
精霊の強弱関係の弱点がついてしまう欠点が存在しています」

「要するに…、S級の手が回らないときは、相手の弱点属性のA級で迎撃したり
PTやMSで応戦しろ、ということですね?」

そのファレグの言葉にオレンジペコが頷いた。
そしてファレグが呟く。

「…となると…、俺の魔動機には少し工夫が要るな…」

その呟きはダージリン達に聞こえていたのか今まで黙り込んでいた男が喋りだした。

「この機会に、あの開発中の魔動機を試用してみたらどうだろう?」

その発言にアップルが言う。

「確かに、烏龍の言うとおり。
あの魔動機はこう言うときの為に製作したもの。いい機会だと思うのだわ」

「うむ、私も賛成だ。ダージリン、どうする?」

「無論、俺も賛成だ。
ルベウス中尉、君に最新式の魔動機を与える。
俺から軍の上層部には伝えておこう」

その思いがけない言葉にファレグが少し驚くが

「…宜しいのですか?」

「ああ、構わん。君の活躍期待しているよ」


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