「ところで、フル。今日はどうしたんだ?」

痺れを切らしたのかファレグがウルズとフルの会話に割り込んだ。
しかも、いつもと全く違う声だ。

―…こんな声だったか?

ウルズも思わず突っ込みたくなるほどの変わり様

「あ、はい。近くまできたんで!」

そう言ってファレグに手提げ袋を手渡した。

「これ差し入れです!」

「“俺に”か?」

ファレグがそう尋ねるとフル即答

「いえ、皆さんで食べてくださいネ!」

「…あ、ああ…」

ファレグちょっとショックを受けたような声を出す。

そんなに自分にじゃないのがショックだったのだろうか…

「では、これで帰りますね!あまり長居すると仕事の邪魔になっちゃいますし」

「いあいあ、そんな事はないぞ?」

何故か、物凄い勢いで邪魔にならない事をアピールしている。
明らかに少女の言っている事が正しいのに…帰るのまで引きとめている

そして少女に言い負かされたのか少女は結局帰る事に。

「ならば、送ろう」

君は、仕事中では… っと思わず突っ込みそうになる、ウルズ

「いえ、大丈夫ですよ。では失礼しますね。またー」

そう言うと一礼し帰っていくフル。
その後姿を、気持ち悪い笑顔で見送るファレグ。

そして姿が見えなくなった途端いつもの顔に戻る…

そんな様子にウルズは思わず

「…先ほどの少女は…」

聞かずには言われなかったというわけだ。
そして、妹と即答する彼

「しかし、君に対して兄のように接していないように見えたが…?」

と尋ねる。
本当はそんな事よりも、ファレグの態度の方が気になったが
さすがに聞く勇気はなかった

「…フルは記憶がなくてな…」

「そうだったのか、すまない」

「いや、かまわん。
8年前に、震災にあってな。その時に生き別れになった。
つい最近ようやく見つけたんだが、あいつは記憶を失っていた」

そう思いつめた表情で語るファレグ

「…ま、小さかったからな
記憶があったとしても覚えてないかもしれんが」

「…つらい事を聞いてしまったね」

「構わんさ。どうせアイカワ達も知っているしな。
それより今日はお前の兄弟はどうしたんだ?」

ウルズはその質問に顔を曇らせた。

「…用事があってね。少し外出している」

ウルズは、そう答えると西の方を見つめた。
すると一人の男がこちらを見ているのがわかる

見慣れない男だ。
恐らくフェフの助手の一人だろう

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