リズナは深い森の奥を愛機"ヴァルキュリア・エンゼル"で走行していた。

「ずいぶん、北にきたけど…。全く何の気配もないわね…」

モニターや、レーダーで確認しても辺りに動物の気配すらなかった。

(・・確かここらの動物、大半があのビーストにやられたって言ってたわね・・・)

そう思い再びあたりを確認するが、やはり周囲に動物の気配はなかった。

(大群とあのでかさ・・。
しかもあの凶暴性じゃ普通の動物では何の抵抗もできない、か・・・)

そんな事を思いながらしばらくヴァルキュリアを走らせると、
レーダーに熱源反応反と何者かの接近を知らせるアラートが鳴り響いた。

「熱源反応?こんな場所で?」

今捜索中のビーストは、
まだ解明されていないが一応生物に分類される為熱源反応はないはずだった。
なのに、この山奥で熱源反応。
おそらく起動兵器、どこかの組織の残党だろうか?

「・・・右か」

そう言って、ヴァルキュリアの武装であるライトブリンガーを光の中から召喚した。
まだかなり遠いが、起動兵器であることには間違いなさそうだ。
リズナは、戦闘の準備に入るが。

「!」

姿を現した機体は、これまで歴戦を乗り越えてきた彼女でも見た事ないのマシンだった。

(アンノウン・・・?)

相手は、こちらの姿を確認できているはずなのに何の反応もない。
リズナは相手に、通信を入れた。

「こちらは、連邦軍、エレメンタルナイツ所属の者よ。
そこの所属不明機一体そこで何をしているの?」

リズナの問いかけに相手は何も反応せず、敵意も向けてこない。

(何なの、こいつ・・・。無反応はこっちが困るのよ)

そんな心の中で突っ込んでいると、相手の所属不明機は唐突に呟いた。

「secret....secret...chord...」

「シークレ…?何、一体…?」

「Time...Dri...楽..ん...」

「何を言ってるの…?」

「あなたは、違う。
IRIAの探しているモノじゃない…」

所属不明機に乗る少女はどうやらIRIAと言うらしい。
だが、謎めいた言葉を残しIRIAは飛び立ってしまった。

「ちょっと、待ちなさい!」

リズナは任務中の為IRIAを追う訳にも行かず、IRIAはそのままどこかへ行ってしまった。
リズナは、IRIAの存在になにやら胸騒ぎを感じていた。





南の担当に当たっていたワカバ。
そこは、リズナが捜索しているエリアよりも、山の奥の方だった。

(ここはかなり、薄暗いですね・・・、何かいそうな感じがする・・・)

そして彼女の予感は的中する。

物陰で何かが蠢くのに気づいたワカバは、愛機ノームの拳を構える。
実際ワカバは格闘技は苦手なのだが、S級魔動機であるノームに選ばれてしまった為
格闘の武装も使いこなさなければならなかった。

魔動機と呼ばれる起動兵器は、
地底世界ラ・ギアスの技術、地上世界各地の魔術的要素そして最新機械技術。
それらを駆使し作り出されたこの人型起動兵器は大変特殊なマシンだった。
特にその中でもS級と呼ばれる、
ヴァルキュリア、イフリート、ウンディーネ、ノーム、シルフィー、シャドウ、ライト
の6体は高位精霊と呼ばれるものと契約しており操縦者を、
「契約者」と言う形で選ぶため誰でも乗れるわけではない。

「さて、どこから来ますか・・?」

ワカバが身構えた瞬間横から、犬のビーストが飛び掛ってくる。
ワカバはそんなビーストを勢いよく打撃で叩き落した。

しかし、

「後ろッ!?」

ワカバが振り返るとそこには、数匹の子供を連れた親ビーストがいた。

「…どうやら、ここが当たりだったみたいですね…!」

親ビーストが遠吠えをあげる。
どうやら周りにいるであろう子供を呼び集めているのだろう。

ワカバは、親が遠吠えをあげている内に襲い来る子ビーストを次々駆逐して行く。
しかし親ビーストの遠吠えに応じ次々と周りから子ビーストが集まってきていた。


「…さすがに、数が多いかもしれませんね…」

そう呟くワカバ。
しかし表情はまだ余裕に満ちていた。


[4/110 ]

 

Original Top

[しおりを挟む]




第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -