リズナは食堂に来ていた。
何か考え事をしながらココアを手にする。


―…あの子があんな考えを持ってたなんて…


リズナは数時間前のウルズの発言を思い出していた。


―未来世界の彼とは…、本当に違うんだ…


信じていいのだろうか?

でも、もし万が一何かの弾みで、同じような未来がおきたとしたら?

同じような結果に辿り着いてしまうような何かが起きてしまったら?


そう考えると、彼らを信じるのは辛い


“2度め”の戦いになったら…


今の私は、彼らを倒すしか出来ない。


だって、未だにあの時の解決策が
“ソレ”以外見つからないから。


ココアをぐいっと飲み干しゴミ箱へ投げ捨て
部屋へ帰ろうした瞬間だった。
前から、見覚えのある少年が歩いてくる。

「…こんな所に来るのね」

少女はその少年に始めて自分から話しかけた。
少年はそんな彼女に少し驚いたようだが、答えた。

「…たまに、だけどね」

少年はそう言って、コーヒーを買う。

「…食事や、飲食するようになったんだ」

リズナは、少年のコーヒーを開ける姿を見て素直な感想を述べる。
少年は、開けながら返答した

「…ワカバ、だったかな。
食事には、大切な事があると聞いた。
…生きていく上で必要な事以上に大切な事がある、とね」

少年、ウルズは素直にそう言うとコーヒーを一口

「…僕は結構これ気に入っているよ」

リズナはそんな姿を見て、

「…ヒトは一人の食事に“寂しい”という感情を感じるわ
けど、大勢で食べるとね。
寂しいではなく“楽しい”に変わる」

「“寂しい”と“楽しい”?」

「美味しい、不味い、という感情もあるわ。
あなたがソレを気に入ったならそれは“美味しい”という感情なのでしょうね」

ウルズはコーヒーを見る。
そして、尋ねた。

「不味いという感情は?」

「簡単に言えば、なんらかの理由でその飲食物を“気に入らない”事」

ウルズは彼女の話を黙って聞いている。
リズナは、話を続ける

「でも、その“不味い”という感情もね。
沢山の人と一緒に食べると“楽しい”に変わる事もあるのよ」

「…何故?
気に入らないモノを食べて、“楽しい”になる?」


ウルズは質問した。
彼にはまだ分からない事だらけだった。
人間の、感情、行動。
彼が創造主に教わった事は、人間の負の部分ばかり

人間の弱さ、愚かさ

彼はいつも言っていた。
ヒトは無能で何もできない、つまらない生き物だと。
けれど僕達、マシンナリーチルドレンは、
ヒトより知能も、機能も、何よりも優れている、と。
僕達なら何でも出来ると、この世の全てを掌握できると


けれど、ここにいる人間達のやること、成す事。
全て僕らの知らない、僕らには出来ない事だらけだ。


いや、違う。
人間だけじゃない
あのセルシリア帝国の人造人間もそうだった。

同じ“機械類”なのに
彼女らと僕らには出来る事と出来ない事があった。

…ソレから導き出される答

それは

“僕らは決して完璧などではない”


「…そうね。言葉にすると難しいわね…」

少女は考えている。
そして

「あ、こう考えればわかりやすいかな。
仲間がいたらどこにいたって、何していたって全て楽しくなるのよ」

「…気に入らないものも、仲間[大勢]で食べると楽しくなる…」

リズナは、少し話すぎたかと心の中で呟き
ウルズに別れの挨拶をする。

「じゃあ、私行くわね。
ヴァルキュリアの整備しないといけないの」

リズナが去ろうとした時、去り際のリズナに

「…色々、ありがとう」

リズナはその言葉にまた心を揺らすが黙ってその場を後にした。




一方その頃、とある研究室では

培養液の入った、カプセルに2人の少年は入っていた。

そのカプセルの前で不気味な笑みを零すのは彼らの想像主
そしてモニターを見つめる。

≪2号体、メンタル部分の改善終了まで、5分≫

≪3号体、肉体部分、メンテナンス終了まで…≫

そしてその文字の下には

≪1号体 前回の調整日 00/00/00…≫

と書かれている。
そして彼は、心の中で呟く…

―基盤が崩れるのはまずいからな…
頻度を下げていたが、そろそろ調整しないとまずい…か


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