第10話 少女と機械の少年
街では民間人達が数十人。
男、女、子供、年齢を問わず暴力をふるい暴動を起こしていた。
ある者は、止めに入る人間を。
ある者は何もしていない他人を。
殴り、貶め、相手が泣き叫んでも、逃げても、それをやめようとしなかった。
更には、民間人用の魔動機がその場にあり、
それこそ企業用のC級だったがそれを暴動に利用している者さえ居た。
そんな荒れた状態に、警察や軍さえも呼び出された
上空からエレメンタツナイツとイーグレット3人がそんな場所に到着する。
「…ひっでぇ…」
ケンタが一番に口を開く。
ワカバはそんな状態に思わず目をそらした。
リズナもそんな民間人の様子を確認する。
リズナの目に真っ先に入ったのは、1人の人間を囲み暴力を振るって居る集団だった。
我慢できずとめに行こうと動いた瞬間だ
「…本当に、人間はどうしようもないクズだな」
その一言が彼女の動きを止めた。
そう言い放ったのは黄色に紫のメッシュが入った少年。
「そうだねぇ。不安に押し潰されそうになると自分より弱いもの貶める。
ほーんと、やること、考える事全てにおいてゴミ以下だよ。」
更にそう続けたのは、いつも薄ら笑い浮かべている
黒と青色のメッシュを入れた男の子。
そんな2人の言葉に未来の彼等の姿が頭をよぎる。
「…そんな事は…」
ないっと断言しようとした瞬間だった。
「きっと、そんな事はないはずだ」
耳を疑った。
先程、暴言を吐いた少年達と同じ声がその場に浸透する。
彼女よりも先に、そんな事はないと、言ったのは
マシンナリー・チルドレンのオリジネイターだった。
「…彼らは、脅えているんだよ」
この暴動は、大量行方不明事件が
拉致だと予想されたニュースが流れた直後に起きたものだ。
彼らは、いつ自分も拉致されるかわからない状況に
不安や恐怖によって
狂気に走った人間だと予想されている
「…生き物は不安になったり、脅えたりするものだよ。人間でなくともね」
その荒れた状況を見ながら冷静にそう言う少年。
そんなオリジネイター・ウルズの言葉に
2人は反論した
「脅えても、他の動物はこんな愚かな真似はしないよ?
こんな愚かで、浅はかな事をするのはこいつらだけさ」
「そうだよ
こんな連中助けてやる価値なんてないね。
勝手に共倒れすればいいさ!」
そんな2人の過激な発言を聞いてもウルズは言う。
「…確かにほんの一部の人間はそんな連中もいるんだろうね。
けれど…、彼らがヒトの全てではないはずだ」
“彼らがヒトの全てではない”
その言葉を聞いた時、
胸に何かが当たったようなそんな鈍い痛みが走った。
それは、少女が彼を根っこから誤解していた事を再確認させる。
―やっぱり…彼は…
未来の彼も―…
きっと遠い昔はこうやってヒトにまだ期待を持っていたんだ。
でも、長い長い時間、人類を見守って行くなかで、
きっと何かが壊れてしまったんだ
更に少年は言った。
少女の心を深く、強く、動かす言葉を。
「全ての事にはいつも原因がある…。
彼らがこうなってしまった事にもね。
それをよく理解もしないで、僕は彼らを悪いとは思わない」
そんな彼に、2人は黙り込んだ。
そして他のメンバーは深く相槌を打ち
「お前、良いこというじゃん。言うとおりだぜ
このヒトらが一方的に悪いわけじゃねーよ」
ケンタがそう言って、民間人を止めに行く。
そしてアスミも
「そうだね!
確かに、コレの原因もセルシリアっていう人間達だけどさ
あの人らにも、もしかしたら何かあるかもしんないもんね!」
そう言いケンタの後を追いかけ
「ええ!
行きましょう、まずはこの事態を鎮めないと!」
ワカバも、それに続き
スリサズと、アンサズは顔を見合わせた後3人の後を追っていく。
ウルズはそんな2人の姿を確認した後自分も
民間人の救助や、暴動を止めに入った
その様子を、黙って見ているリズナ
そしてファレグがそんなリズナに。
「あれでも、アイツらの事まだ信用してやれんか?」
「…少しだけ、信用…してみようかなって思った」
リズナはそう小さくファレグに返答する。
そしてその言葉にファレグは言う。
「ああ、そうしてやれ。俺らも行くぞ」
その後数時間、暴動をとめるのにかかったが
なんとか収まり怪我人は数人出してしまったが、幸い死者は出なかった。
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