格納庫に戻る途中ウルズはある事を考えていた。
それは今戦った彼女達の事


―…アンドロイドなのに、彼女達はまるでヒトのようだった。


…機械のはずなのに…
まるで感情があるかのように…


あの仲間を思う姿。
あれはまさに、本物だった。

もしかしたら、その辺にいるような人間達よりも
遥かに強い仲間意識をを持っていたかもしれない。


―…機械でも、ヒトのような感情を手にする事ができるのか…?




ウルズがヒュッケバインから降りると、隣にヴァルキュリアがあり
その操縦者リズナ・アイカワもヴァルキュリアの前に立っていた。

リズナはウルズに気付きつつもいつものように気付かないフリ
そんな彼女にウルズは話しかけた。

「…今日も無視かい?」

「…話す事なんてないでしょう?」

ウルズはいつもと同じ言葉を返す少女に、先日の食事の話を持ち出した。

「先日の食事…いや、歓迎会だったね。始めて食事を摂取した」

思いがけない事を話し始める少年に、
リズナは思わず少年を見てしまった。

「…それが?」

「僕らは、食事をせずとも生きていけるからね。
今まで食べる必要がなかったんだ。君達との違いのひとつだね」

「…何が言いたいの?」

リズナは、そんな御託は良いと言った風だ。

「君は何故僕達をそこまで警戒するんだい?僕等がそんなに疎ましいのか?」

どうやら、少年は自分が警戒している理由を
何か違う理由だと考えているようだ。


私は、別に人造人間だから、警戒してるわけじゃない。
人造人間だとか、人間じゃない、だとかそんな事は別にどうだっていい。

私が警戒してるのは、彼らの“行く末”だ

きっと、あの計画を実行したのが
彼らじゃなくて、他の違う誰かだったとして

もしのその誰かが目の前に現れたら、同じ態度を取っているだろう。

だから、彼が考えているその“理由”は大分違う。


「…君が言っているのは人造人間だからって事よね」

「ああ…それ以外何かあるとでも?」

「…そんな事はどうでもいいのよ。人造人間なんて世の中沢山いるでしょう?
そんな事でいちいち鼻に付けたりしないわ」

「なら…何故、僕らを嫌う?」

その言葉にリズナは言葉を閉ざした


違う、嫌ってるわけじゃない。

けど、“理由”なんて言えるわけはない。


まだ何もしていない彼らに、未来での話をしてどうなる?
もし本当にファレグが言ったように彼らはそうならないならば、
この話は彼らにするべきじゃない。

リズナはその“理由”を断固として語らぬ決意だった。

「…ひとつ忠告するわ」

「忠告?」

「人間は愚かかもしれないけど、そこまで悪い生き物ではない。
分かろうともしないで嫌うのだけはやめて。」

「…」

ウルズはその忠告に、対し何も言わなかった。
その忠告の後リズナは黙って彼の前から去ったが、ウルズは心の中で

―…知ってる。

と呟き、彼女の後姿を見つめた。


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