食事会の次の日。
リズナは基地の廊下を歩いていた。
目の前から見覚えのある人物が歩いてくるのを確認する

イーグレット・フェフだ。

「“戦慄のヘカテー”か」

「…その呼び名はやめて頂けませんか」

「すまないな。俺の子供達は役に立っているかね?」

自信満々に尋ねるイーグレット・フェフ
リズナは接していないのだから分かるわけはないので適当に答える。

「ええ、とても優秀ですね、彼らは」

自慢の子供のデータが徐々に揃って行く、その様がとても嬉しいのだろうか?
やけに機嫌がよさそうだ。

(この男は、確か人間が嫌いなんだっけ。
…未来世界のウルズ、あの子が言ってたけ)

あの時の彼の言葉を思い出す。

『僕達の創造者はヒトという生き物のぜい弱さや愚かさに嫌気がさしていたようだったからね…』

(…こいつは、こんな事思ってんのか…
ちょっと探って見るか)

リズナはそう言うとイーグレットに話しかけた。

「イーグレット博士
マシンナリー・チルドレンはとても優秀ですね。
一体どのようなコンセプトでお作りになられたのです?」

その質問に彼は自信げに答える。
どうやら自身の創作物によほど自信があるのだろう

「新たな、人類だ」

「…新たな人類ですか。それはとても素晴らしいお考えですね。
一体何を定義にしていらっしゃるのです?」

「ヒトという生き物はぜい弱で愚かな生き物だ。
俺が作ったマシンナリー・チルドレンはそれを全て克服している」

「…確かに、彼らはヒトに比べると、
とても強靭な肉体と、素晴らしい知能を持っているように感じますが
少し精神面が安定しないように見えます。その辺は実験か何かなのでしょうか?」

リズナは、あまりにも自信ありげに話す、その態度に苛立ちを覚え
昔から思っていた事を指摘してやる。
すると彼の反応は意外な物だった。

「ほう、察しが良いな。ああ、わざと精神面は不安定にしてある。」

その反応に少し驚き聞き返したリズナ

「…一体何故そのような?」

「…色々バリエーションが欲しくてな。ウルズ以外は、替えが利く。
少しでも不安定な部分を作り感情バランスの研究をしている。
解析を繰り返し、精神面も安定した人造人間を作る為にな」

その替えが利くと言う言葉がリズナは気に入らず、更に問う。

「…3人とも優秀な固体と聞いておりますが…
ウルズ以外は本来実験用なのでしょうか?」

「…ああ。そうだ。
ある程度データが揃い2人以上に優秀な固体が
製作できるようになれば、破棄も考えていた」

(…優秀なのが手に入ったらもう要らないですって?
何なの、この男…ッ!)

内心、フェフの言動に苛立ちを覚えながらリズナは冷静を装っていた。

「そうですか…。
破棄はあまり好ましくないと思うのですが…彼らにも感情があるわけですし」

「面白い事を言うのだな。“戦慄のヘカテー”
2号、3号の感情などプログラムに過ぎん。書き換えれば好きに替えられる。
プログラムで動いている“試験体”にそのような気遣いは無用だ」

リズナは…フェフの考え方を完全に否定したかったが
今ここで否定したりしたら、マシンナリー・チルドレン3人を回収される事を恐れた。

人類抹殺するという考えが彼の思想なのだとしたら、
彼に戻せばあの子達はあの未来世界と同じ道を歩んでしまう

こんな考えを持った男には、返せない

人類を見下してるって時点で、返してはいけないと思っていたが
彼の本性を聞いてしまった事でリズナの考えは確信に変わった。

「…では、イーグレット博士。
そろそろ時間ですので…私はこれで」

リズナはそう言うとイーグレットに一礼し彼の元を後にしようとするが

「“戦慄のヘカテー”
機会があればお前のデータも頂きたいものだな」

その言葉には返事をせずにリズナはその場を後にした。


ファレグ達の所へ戻ると、なにやらファレグがマシンナリー・チルドレンと話をしている。
どうやら、イーグレット・フェフの指示により次回の戦闘から本格的にウルズ達が戦闘に投入されるらしい。

「アイカワいたのか」

ファレグがリズナの存在に気付いた。
そして、リズナが挨拶する。

「ええ、その子達、戦闘に投入するのね」

「らしいな」

「…あのマッドサイエンティストは何を考えてるの?
貸し出すとか言っときながら、戦闘には出すなとか指示したり、
今度は戦闘させてくれ?本当に何を考えてるのかしら」


そのリズナの皮肉に、ファレグが資料を手渡す。

「なにこれ?」

「セルシリア帝国の起動兵器とパイロットのデータだ」

ファレグの説明に、リズナは資料に目を通す。

「…あの量産型の起動兵器に乗っていたのは、アンドロイド…?」

「ああ、それも全てな」

アンドロイド…。人造人間だ。

「…相手が同じ人造人間だから
戦闘に投入する気になったのかしら?」

「おそらくな。データが欲しいとかそう言うところだろう」

リズナはフェフの言葉を思い出す。
そしてその場にいる3人を見る。

(この子達も…人間の勝手な考えや行動によって作られた…
被害者なのかもしれない…)


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