第7話 狂った科学者

リズナは、基地の屋上へ来ていた。
今日はとても晴れている

(もうあの子らがウチにきて1週間たったか)

それまで殆ど会話していなかった。
他の子達とのやり取りを見ると、
そんな悪い子じゃないんじゃ、とはいつも心の中で思う。

しかしあの時の事を思い出すと、彼女は彼らに心を許せない。

(…今日は食事会やるんだっけ…
歓迎会とか言ってたか…歓迎してないんだけどな、私)

そんな事を思いながら、戻ろうとした瞬間だった。
目の前に誰かいる。

「…」

リズナは“誰か”が目に入ったが無視する。
そんな態度にその“誰か”は

「…いつも無視するね」

少年はそう言った。
リズナは横目で、冷静そうな薄紫に真紅のメッシュが入った少年を見て

「…話す事ある?」

冷たく言った。

「…あるかな」

少年はそう答え、
その言葉に思わず少年を直視するが

「…私はないわ」

彼女は冷たく言い放ちその場を後にした。






エレメンタルナイツに与えられた部屋では、
ピザやらスシやらいわゆるパーティ食が並べられていた。

その様子をムスっとした様子で見る1人の少年。

「ほらほら、食べて食べて!」

アスミがそんなむすっとするスリサズにピザを差し出す。

「要らないよ」

「えー。美味しいよ!」

ちらっと、ピザを見て視線を又そらすスリサズ。
そんな様子をアンサズが見て

「君達面白いねぇ」

「そうだろ?だから、お前も食えよ!」

ケンタがそう言って、ケーキを差し出しアンサズをそれを見ながら

「僕も要らないけど」

「なんだよ、それ!」

ウルズはその様子を見つめながら遠めで、窓の外を見ているリズナをちらりと確認する。
そんなリズナを見ていると、ファレグが彼女に近づいて行く。

「アイカワ」

「何?」

そんな会話だ。
彼女をどうやら呼び出しているらしい。
ウルズはそんな事を確認しながら、他の人間たちに視線を戻した。

「ほれほれ!」

髪を2つに結えた少女はスリサズにピザを食べさせようと絡んでいる
帽子をかぶった少年は、アンサズにケーキを勧め、
着物を着た少女は茶を入れていた。

スリサズがあまりにもしつこいアスミに対して怒鳴る

「ああッ、しつこいな!要らないって言ってるだろ!?
本当に何度言っても分からないなんて低脳どもだな!!」


そんな暴言を吐いたにもかかわらず、3人は動じなかった。
慣れているのだろうか

そして怒るスリサズの横からにこりと、笑ってお茶を差し出す着物の少女。

「ではまずお茶からどうぞ」

そう言って、アンサズと、ウルズに配ってくれた。

アンサズがその緑色の液体を見つめて

「へぇ、これがお茶かい。聞いた事はあるけど、見るのは初だねぇ」

「そうなんですか?そういうの新鮮ですね」

「新鮮?」

ウルズは思わず聞き返した。

「はい、なんかとても…。あ、変な意味ではなくてですね…!
あ、どうぞ飲んで見てください」

そう言われてウルズは、おそるおそる口にする。
その様子をじっと見つめるワカバ

「ワカバ…それ飲みにくいと思う…」

アスミが突っこむと、ワカバは気付き

「ああ。すみません、つい新鮮で!」

アンサズはそんなワカバに

「新鮮っていうのは、ウルズの様子の事かい?」

「あ。はい…あ、っと新鮮と言うか初々しいって言えばいいのでしょうか…」

その発言を聞いたアンサズ

「面白い事言うねぇ?」

スリサズは、ツンとした態度で言う

「僕達はお前達と違って、そんなもの摂取しなくても生きていける。
だから食べる必要なんかない」

その言い切る態度にワカバは寂しそうな顔をして

「でも…なんかそれって悲しいです」

そんなワカバをアスミは見て

「うーん、そうだね…。なんだろ…なんか、こう…」

何かを言いたそうな2人にウルズは聞いた。

「何故悲しい?」

「はい…美味しい物を食べる喜びも楽しみも
必要ないなんてなんだかとても寂しいです」

―意味がわからない。

「僕らは必要がないからしないだけだ。
君達は食事を摂る必要がある。
それだけの違いじゃないのか?」

それは機械や、人造人間ならではの考え方だった。

そんな考え方の事なのか、それとももっと違う事なのか。
着物姿の少女はこう返答した。

「…それは、あなたの言うとおりです。
…ですが、それだけじゃないんです。もっと、もっと大事な事があると思うんです」

―もっと、大事な事…?
生きていく上で、必要な事以上に大事な事がある?
…どういう意味だ…?

「す、すみません…うまく言えなくて…!」



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