「クォヴレー、四季の会議の話聞いた?」

月灯は、向かい側に座って食事するクォヴレーに尋ねてみた。

「少しは聞いている。年に4度南部の国で行われる会議だ」

「なんか…。会議の様子を私たち一般の人も見られるらしいのだけど…」

「見たいのか?」

「え、ちょっと興味があるかなーって…。
でもお城で開かれるらしいし…一人ではちょっと心細くて…」

「俺も興味を持っていた所だ。俺で良ければ一緒に行くが」

「あ、ありがとう…!」

そんな会話をしていると、2人の隣でお茶を飲んでいた2人の会話が聞こえてきた。

「やはり、秋の巫女は来る予定がないのか」

「前回も代理だけよこして来なかったらしいわ」

そんな会話の最中に大量の砂糖をぼんぼん紅茶に入れるテュッティ。
その様子を目前で見ていたヤンロンは

「…まだ入れるのか」

「あら、まだ全然甘くないわ」

「…秋の巫女は、妖怪や、鬼と密通をしているという噂もあるらしいが」

「ええ、町ではもっぱら噂みたいね。悪魔だとかも言われているみたい」

そんな2人の会話をもう少し詳しく聞きたかったクォヴレーは立ち上がり2人の会話に割り込んだ。

「俺も興味がある。その話もう少し詳しく教えてくれないか?」

「あら、2人とも。あなた達は、つい最近此処へ来たから知らないのも無理はないわね」

「そうだな。巫女達については何処まで知っているんだ?」

ヤンロンに尋ねられると、月灯は先日知り合ったアルフィミィの事を話した。

「それは、冬の巫女こと、椿の君アルフィミィ王女だな。」

「ええ、この南部の国のお姫様ね。
ちなみに王様と女王様は、かつてこの国で起きた反乱を収めたことを認められ即位したそうよ。
その2人が養子として引き取ったのが、アルフィミィちゃん」

「かつては女王であるエクセレンが冬の巫女だったそうだが、女王になった事で娘に譲ったそうだな」

テュッティとヤンロンが、そう説明するとクォヴレーは

「俺もアルフィミィには会った事がある。女王と一緒に下町にきてよく遊んでいるそうだが…」

「それで、他の巫女さん達はどんな方なんですか?」

月灯がそう尋ねるとヤンロンが口を開いた

「夏の巫女こと、東雲草の君であるイルイ王女は、海の向こうである、揺り篭の国の方だ。
四季の会議の時期になると、女王と共に南部の国へ訪問されるらしい」

「そして、春の巫女、又は桜の君と呼ばれる隣国、桜の国の女王の凪沙桜花様よ。
彼女は、とてもしっかりした方で四季の巫女の中でも一番人気が高いみたいね」

「最後が、先程話していた秋の巫女だ」

「なんかさっきの話だと、凄い問題ありそうですけど…」

月灯が、そう言うとヤンロンが頷いて教えてくれた。

「ああ、評判は巫女の中で、最も良くない」

「ええ、その理由は妖怪や鬼達を、決して殺めず中立を保っているという所にあるのだけど…」

その言葉に月灯は不思議な顔をする。

「え、どうしてですか?妖怪や鬼って、人間を襲ったり、食べたりしてるって悪い物だって聞きましたけど…」

「それは良く分からないの。噂では、彼女の正体は悪魔だとか、鬼だとか…。
四季の会議にも本人は参加せず、代理が来るから…。彼女の姿を知る人も、殆ど居ないらしいの」

「ああ、そう言う悪い噂や、評判が広がり秋の巫女、竜胆の君は、
苦しみを人間に担がせようしているという意味を込めて、苦担の君や疫病の巫女とも言われているな。」

「わぁ…、なんか怖そうな異名…」

月灯がそう言うと、ヤンロンは

「苦担と言うのは、本来竜胆の古名のはずなんだがな。
江戸の時代では解毒剤などに用いられていたし、漢方では現在でも使用している
それを、苦しみを人に担がせるなどよく捻ったものだな」

「疫病の巫女っというのは、人を苦しませる病気を流行らせるみたいな意味ですよね…」

「そうね、でも確かに人の命を危険に曝す物との間で中立を保っていると言え、酷い言われ様ね」

「だが、致し方ないのかもしれんな。
重要な立場に居る人間が、不審な行動を見せれば誰でも疑いたくはなるだろう」

ヤンロンがそう言ったあと今まで黙っていたクォヴレーが口を開いた。

「…ヤンロンの言う通りだろう。
この世界は滅びかけている…。そんな状況で人々に余裕があるとは思えない」

「クォヴレー…、そうだよね…。この世界滅びるかもしれないんだよね…」

テュッティが悲しそうな顔をする月灯を見て

「大丈夫、きっと何とかなるわ。
数千年前だって、世界を救えているんですもの。」

「そっか、数千年前の災厄はちゃんと防げたんだ…。だから書物とか残ってるんだ」

「ええ、そうだと聞いているわ。だから今度もきっと世界を救えるはずよ」

2人が喜んでいると、ヤンロンが水を差した。

「…いや、数千年前の巫女達は全員この災厄に協力的だった。
しかし…今回はそうではないというのは大きいかも知れんぞ」

「…一体秋の巫女は何を考えているのかしら…」

テュッティが、そう言うと、月灯は、黙り込んでしまった。
そんな彼女を気遣うクォヴレーは

「…四季の会議で直接確認しに行けば良いだけのことだ。
もしおかしな考えを持っているのなら正してやれば良い」

「ク、クォヴレー?
でもそんな事出来るのかな…、他人に意見して考えを変えるなんて…」

「はっきり出来ると言い切れん。
だが、行動を起こさなければ何一つ変えることはできない」

「そっか…。やってみなきゃわかんないよね…」

「ああ。月灯…。お前は自分に自信を持った方が良い」

「え…、うん…」



クォヴレーは、自信を持った方が良いって言うけど…。
それって凄く難しいよ…

他人の意見を自分の考えで、変えるなんてそんな事本当に出来るのかな…?

だって、相手が正しいのかもしれないし…
私は間違ってるかもしれない。

なのに、自分の意見を押し通すなんて、難しいよ…



 

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IV.季節は巡り、人は生きる
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