ダイテツから話は、続いていた。
それは月灯には驚きの連続で、開いた口がずっと塞がらないでいた。

そんな彼女にクォヴレーが言う。

「そんなに驚くような事なのか?」

「クォヴレーは驚かないの?!」

彼もこの世界に呼ばれてきた人間らしいが、自分と違って変に落ち着いている。
記憶がないと言っていたが、それが原因なんだろうか?

あ、そういえば
記憶がないのに、どうして自分がこの世界の人じゃないって分かったんだろ?

「まあ、驚くのは無理はないだろう。
この世界は今、数千年に1度の災厄によって滅びかけているなど急に言われてもな」

テツヤがそう言うとダイテツが話を続ける。

「しかしこの世界ではそれは事実なのだ。
災厄が近い証拠として別世界から頻繁に人間が召喚されている」

「…災厄が近づくと、別の世界から人間が召喚されるんですか?」

「うむ、何故別の世界から人間が召喚されるのか、
それに何の意味があるのかはまだ解明はされていないのだがな…」

ダイテツがそう言うと、テツヤが付け加える。

「数千年に1度しか起こらないからな。情報が数千年前のものしかないんだ
だから、それを記した書物も破損していたり、失われていたりして中々研究が進まないというわけだ」

テツヤの言葉の後にクォヴレーが尋ねた。

「後は何が分かっているんだ?」

「その災厄を防ぐ為には4つの宝具が要る、と言うことだが、これは災厄の解釈によって変わるが…」

そのテツヤの発言に月灯は

「防ぐ方法があるんですね、なら心配する事ないじゃないですか!」

「いや、そうでもないんだ。
学者達が言い伝えの解読を日夜行っているが、先日2通りの見方があると発表されてね」

「2通りですか??」

月灯がそう言うと、ダイテツが言い伝えを語り始めた。

「どの書物にも必ずこう書かれている。
『数千年に1度、満月の夜にて災厄は訪れる。それ防ぎしは、四季司りし者と運ぶものなり。』
詳しく話せば、長くなる…
満月の夜に、災厄は訪れると言われ、それを防ぐ事が出来るのは四季の宝具と言われる道具だ。
しかしその宝具は、相反する季節の宝具と拒絶反応を示すと言われている。
だが、突如現れた蝶の力によって拒絶反応は消え宝具を司りし者は災厄を防ぐ事が出来たという話だ」

その話を理解できていない月灯は、頭上に?マークがあるかのような顔をしていた。
ダイテツの話の聞いたクォヴレーが言う

「その言い伝えの災厄の解釈が2通りあると言う事か」

「うむ、この言い伝えも近年学者が解読したものが広がったにすぎん。
本当の伝承はもっと、抽象的な言葉ばかりだそうだ」

「もう何年も頑張って研究しているそうだが、肝心な災厄の詳細が分かっていないんだよ」

難しい会話をする3人の話についていけない月灯。
そんな彼女におかまいなくクォヴレーは、更に質問をしていた。

「それで、2通りの解釈と言うのは?」

「災厄は、『人ならざるもの』の事であり、それが世界を滅ぼすと言うものと…
もう1つは、宝具自体が災厄そのものなのではないか、と言う見解が存在しているんだ」

テツヤの返答にクォヴレーが理解するため少し考え込んだ。
そして数秒置いてから言葉を発した。

「…拒絶反応を示した宝具自体が災厄…と言う見解が理由で
災厄を防げる可能性はあっても使用することを躊躇っている…と言う事か」

ダイテツが、クォヴレーの言葉に頷き、テツヤが更にその言葉に補足を加える。

「しかし、言い伝えの一節の一つである『蝶』と言う単語に、今注目が集まっていてね。
この蝶が、拒絶反応を収める力を持った何かだという事が分かってきたんだ」

クォヴレーは、なるほどと言うとまた何かを考え込んだようだ。
そんな3人の話を横で聞いている月灯はぼそっと呟いてしまった。

「…私、帰れるのかな…」

その小さな呟きは隣に居たクォヴレーにはしっかり聞こえていたようで

「…心配するな」

と、言ってくれた。
そんな彼に思わず、えっ?と言ってしまったが彼はまたこう言ってくれた。

「心配しなくても大丈夫だっと言ったんだ」

何故かは分からないが、彼にそう言われると不思議と安心してしまった。

クォヴレーは…記憶がないんだっけ…
知らない世界にきて、記憶がなくて、きっと私より不安かも…

それなのに、私を励ましてくれるなんて…
凄いな…


ダイテツさんや、テツヤさんとクォヴレーでそれから暫くお話をした。
元の世界に帰る方法は、少し手荒な方法らしいけど一応あるみたい。
でも、災厄の前に別の世界から召喚されると言う事は
災厄に『関係』があるかもしれないと言う理由で暫くはこの世界に留まることになってしまった。

正直、何も知らない。誰も知らない。
そんな場所に一人でいるのは不安でしかなかった。
しかもこの世界はもう少しで滅びちゃうかもしれないなんて…。


ダイテツさんとテツヤさんがいる部屋から出て、
私のために用意してくれた部屋へクォヴレーが案内してくれた。

「クォヴレー…」

「どうした?」

「クォヴレーは、帰りたくないの?元の世界に」

「俺は元の世界の記憶が殆どない。」

「あ、…ごめんなさい」

「いや、気にするな。確かに元いた世界の事は気になるが…。
今この世界は危険な状況に置かれている。そんな世界を簡単に見捨てる事はできない」

「クォヴレーって凄いね。
私、ダイテツさん達のお話を聞いても全然そんな風に思えなかった…」

「…そうでもないと思うが…。
だが、これは俺個人の考えだ。月灯も、自分の考えで決めたほうが良い」

「…そうだよね…」

「そんな不安そうな顔をするな、月灯。
俺も同じ立場だ、協力しあえば上手く行かないことはない」

「そっか…。クォヴレーも同じ召喚された人なんだよね。
お互いこの世界の事分からない事だらけなんだ」

「ああ、だから一人抱え込む必要はない。
俺も一緒、だと思えば月灯も楽になるだろう」

「う、うん…!お互い、がんばろ、クォヴレー!」



こうして、私はこの『何でも屋 鋼』で暫く過ごす事になった。
でもこの時はぜんぜん分かってなかった。
この世界でこれから起きるとっても大きな事に。
でもそれは、凄く大変な事と同時素晴らしいものでもあったんだ


 

戻る
II.初めてだらけの世界で
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -