いつも私は何もできなくて、いつも友達の意見に頷いてた。
友達2人の意見が別れても私は何も言わずに黙って見てるだけ。
他の友達が2人の仲裁をやっていても、何もやんなかった。
私の意見はいつも皆と同じ。
いつも誰かと一緒。
自分の意見なんて持ち合わせてなかった。
けど此処にきて私は変わったんだと思う。
ううん、変わらなければいけなかった。
だって、此処には私を『必要』してくれる人が大勢居たから−…
「…ん…んん〜…」
あれ…なんか冷たい…?
今日の布団なんか違う?
いつももうちょっと温かくて、柔らかい感じなんだけど。
月灯は、そう思いながらうっすらと目を開けようとした瞬間だった。
「こんな所で寝ていたら風邪を引くぞ?」
頭上から男の人の声が響いた。
「えっ!?」
月灯は、驚いて勢いよく顔を上げるとそこは彼女が見たことのない風景が広がっている。
「えぇっ!?な、なんだ、ここ!!」
思わずそう言ってしまいキョロキョロ見渡していると
先程自分に声かけてきたと思われる男の人が不思議そうな顔で言う
「? 一体何をそんなに驚いてるんだ?」
月灯は、そんな彼に
「だって、私今まで自分の部屋で寝てたはず…なんだよ!
なのに、起きたらこんな川みたいな所に居て…!って、あなたは誰!?」
目の前にいる男は、少し不思議そうな顔をしながら答えてくれた
「そうだったな。
初対面の相手には、まず名乗るのが礼儀らしいからな。
俺はクォヴレー・ゴードンだ、よろしく」
クォヴレーのその言葉の言い方に少し疑問を持った月灯。
−礼儀…らしい?
なんだろ、このちょっと変な言い方
そんなこと思っていると、クォヴレーが月灯に名前を尋ねてきた。
「お前は、教えてくれないのか?」
「えっ!あ、私は葵月灯、です!こちらこそ宜しくお願いしますっ!」
そう言って思わずお辞儀までつけてしまう彼女に、彼はまた不思議そうな顔をしていた。
月灯の方もそんな顔をする彼に、不思議そうな表情を浮かべてしまう。
「…ところで、月灯はなぜこんな所に…?ああ、もしかして野外で行う昼寝というやつか?
なら、すまない、邪魔をしてしまったな…」
「ええっ!なんで、勝手に納得してるんですか!?違いますよ!」
「違うのか?
…アラドから野外で行う昼寝は最高に気持ち良いと聞いたんだが…」
「えっと…、クォヴレー?さんの知り合いから聞いたのはそうかもしれませんけど…
私はお昼寝をしてたわけじゃなくて…、なんて言えばいいんだろ、こう言うの…」
月灯が困っていると、クォヴレーは何かを思いついたように話し出した。
「…俺がお世話になっている場所に来ないか?そんな格好では、冷えそうだからな」
そう言われ始めて気付く月灯
薄い生地のパジャマで、夏用の為半袖だった。
そして今居る場所は野外であり、肌寒い位の気温だった。
「た、確かにちょっと寒いかも…」
「昼寝を邪魔して申し訳ないが、さすがにその格好では風邪をひくぞ」
「だから、昼寝じゃないってば!」
そんな感じでクォヴレーさんに連れられてなんだか賑やかなところに来ました。
ここは何だろ…?何かのお店屋さんなのかな…
なんか、クォヴレーさん、奥に入ってたけど…
そんな感じのことを思いながら辺りを見渡してみる。
クォヴレーが入っていた建物には大きな文字で『何でも屋 鋼』と書かれた看板がある。
それと、此処はさっきまで居た場所に比べたら賑やかではあるが人気のない郊外といった感じだ。
町外れの郊外と言った感じだけど、町の風貌は確認できる位には人が溢れていて
なんか江戸時代とかそう言う感じの雰囲気。
外を歩く人もそれぽい格好をしている。
でも、クォヴレーは他の人と違った格好をしていてなんか全然違う雰囲気を出していた。
月灯が見たことのある服装ともなんか違った雰囲気の独特な感じな格好である。
クォヴレーが入っていた家のような建物から声が聞こえた。
「またか」
「今月に入って何人目だ、これ?」
そんな感じの会話が聞こえる。
一体何の話かは詳しくは分からないがどうやら自分のことぽい事が分かる
暫くするとクォヴレーと一緒に2人の男の人がその建物から出てきた。
クォヴレーの手には羽織のようなものが握られていて月灯に差し出してくれた。
「冷えただろう、これで体を暖めるといい」
「あ、ありがとう」
そうお礼を言って羽織を使うとクォヴレーと一緒に出てきた2人の男が話しかけてきた。
「ふむ…。やはりな」
そう言ったのは、50代くらいの男の人でとても貫禄がある雰囲気の人。
その人の後に20代前半から後半くらいの男の人が言う。
「これは間違いなさそうですね、ダイテツ艦長」
そんな彼の台詞に思わず心の中で突っ込んだ。
−艦長!?船に乗ってる人!?
そう思っているのがばれたのかクォヴレーが一言教えてくれた。
「気にしたら負けと言うやつらしい」
「そ、そうなの!?」
江戸時代風の設定なのに、艦長呼びとか色々突っ込みたい所はあるかもしれないが
スパロボのパロディとかパラレルとかそう言う設定だからokと言う事になっている。
月灯に話しかけてきたのは、若い方の男の人だった。
「色々気になることもあるかもしれないが、まず君にいくつか質問がある。
君は、ここが何処だか理解できているのか?」
月灯はその質問の意味が全くわからなかった。
きょとんとしていると、クォヴレーが助け舟を出してくれた。
「俺も、彼らに以前同じ質問をされた。
その時の俺の返答は『わからない』だ。月灯も同じなんじゃないか?」
「え、それってどういう…?」
「俺は此処へ来る以前の記憶が殆どない。
だが、分かっている事が1つだけある。俺は『この世界の人間じゃない』」
「えぇぇえ!」
月灯は驚いていると、ダイテツが彼女に質問を戻した。
「で、お前さんはどうなんだ?」
「…私、ここに来る前は自分の部屋で寝てたんです…
でも、朝起きたら知らない川原に居て…。だから、その質問はクォヴレーさんと同じだと思う…」
その返答に、テツヤとダイテツはやはりなと言って少し考え込んでいた。
そんな2人の様子を少し不安に感じた為、隣に居たクォヴレーに聞いてみる。
「あ、の…、クォヴレーさん」
「さんは、つけなくていい。どうした?」
「え、じゃあ…クォヴレーがここに来た時もあんな感じだったの…?」
「ああ、そうだったな。なにやらこの世界は今大混乱の真っ只中らしい」
「ど、どういうことそれ?」
「俺もあまり詳しくは聞いていない。ただ、妖怪という物や、鬼と言う物が暴れているらしいが」
「よ、妖怪!?鬼!!?」
思わず大きな声を出してしまう月灯
その声に気付いたダイテツと、テツヤは
「ああ、2人とも待たせてすまない。やはり、君も妖怪や鬼を見たことがないのか」
「え、あっ、はい…。見たことないです…」
「間違いなく、外部の人間のようだな。」
「そうみたいですね。クォヴレーも居る事ですし、良い機会です。
今彼らが置かれている状況をお話してあげてはいかがですか?」
テツヤがダイテツにそう言うと、彼はふむと言った様子でゆっくりとこの世界のことを話し出した。
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I..始まりだけは、誰も知らない