U.心には雨が降り続く 


それから何日後の事だっただろう。
もう遠い日の事すぎて思い出せない

あの頃の僕は、一体何を思って、何がしたかったんだろう




「地球の各地の状況は悪化するばかりですね…」

「ええ…」

「戦果の方はどうなってるんでしょう?」

「今日も東の方の部隊が、異星人によって壊滅させられたと…。聞きました」

マリアはそう話すソフィアに励ますように言う。
そんなマリアを見ながら彼女の動作を真似して言う、幼い少年が居た。

「大丈夫ですよ、ネート博士。アースクレイドルが完成したら私達は大丈夫ですから!」

「だいじょうぶですからー」

「こら、ウルズ。人の真似しないの」

「まねしないのー」

そんなやり取りを見ながら、幼い少年を見つめるソフィア。
彼女の胸の奥は常に痛んでいた。

−私達はこれでよいのでしょうか…?ゼンガー少佐…


戦わずに揺り篭の中で、平和になる時代を待つ。
それは逃げる事と一緒だ。

勝てる保障など何処にもないのならこの選択だって間違ってはいない、はず。

けれど…

世界中の色々な人が今、地球の為、誰かの為、自分の為に戦いに赴いている。
それは幼い子供、年老いた老兵、愛する家族の居る父親、大切な者の居る母親。
数え切れない程色んな人たちが居る。

少佐だって戦える力があった。
でも、彼は私の為に揺り篭の守護神になることを選んでくれた。

勝てる保障は何処にもない。
いつ滅びるかもわからない。

なら、どんな手段を使っても生き残る。

この幼い少年も、その手段の一つだ。
例えそれが今のこの少年の未来や明日を奪う事になっても
『地球人』と言う種が生き残る為には、それが必要な事なのだ

それは、有効な手段…
いや、今自分達に出来る唯一の手段でもあるはずなのに

何故だろう、何故こんなに胸が痛いのだろう


「大人は…、いえ、私は卑怯ですね…」

「ネート博士っ?一体どうなさったのですか!」

マリアが驚いてソフィアに言う。そんなマリアの声にウルズもきょとんしており

「ソフィアー、どしたのー」

そんなウルズの頭に優しく手を載せるソフィア

「ごめんなさい…ウルズ…」


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