「るくすー。るくすー。どうして、アースクレイドルは今こんなに賑やかなの?」

ルクスの白衣の裾にしがみ付きながらウルズが言った。

「…それはね」

この状況を説明しようと思ったときだった。
前からある人物が歩いてくるのが分かった。

「ルクスさん」

「ネート博士…!あの…どうでした…?」

ルクスは、プロジェクトアーク最高責任者であるソフィア・ネートに尋ねた。
そんな心配そうに訊ねてくる彼女にソフィアは申し訳なさそうに首を横にふった

「…やはり、プロジェクトアークは中止になるそうです…」

「そ、そんな…!この状況でどうして…!」

「総帥は、あくまで徹底抗戦を続けるそうです。そして必ず勝利を収めるつもりでいます。
その目標に、『負ける事』を想定したこの施設が存在しては示しがつかないと…」

「じゃあ、この施設は…、取り壊しになるのですか…?」

「いえ…」

ルクスの質問にソフィアは、自らの意思を答える。

「アースクレイドル…。
プロジェクトアークは、このまま存続します」

「え? でも中止のはずでは…?」

「私と、ゼンガー少佐…。
そして、イーグレット博士と話し合った結果、私達3人でこの施設を存続させます。」

「という事は、ネート博士はDCを…?」

「はい、たったいま…」

「そうですか…」

そんな難しい会話を聞いていたウルズは、ルクスの白衣を引っ張った。

「るくすー。何、何の話ー?」

ルクスはそんなウルズを見つめて、ソフィアに尋ねる。

「ネート博士、この子は…?どうなるのですか…?」

「それは、全てイーグレット博士に一任してあります。」

「イーグレット博士ですか…」

ルクスは、少し儚げな表情をした。
幼いウルズは彼女の気持ちが分からず、ルクスを見上げながらきょとんをしていた。
そして白衣を引っ張った。

「るくすー。泣いてるの?るくすー?」

「大丈夫よ。泣いてないわ」

「るくすー…?」

そんなルクスにソフィアは申し訳なさそうな顔をしていう。

「…ルクスさん、今までありがとう。あなたのおかげで私も随分助かりました。
DCはアースクレイドルを今日付けで破棄します。
まだDCに所属しているあなたが私達の、勝手に付き合う必要はありません。
準備が出来次第、アースクレイドルを離れる事をお勧めします…」

そう言って彼女は、ルクスに一礼をしてアースクレイドルの奥へ消えていった。
そんな姿をルクスは確認すると、ウルズの背為にあわせ優しく抱きしめた。

「るくす…?」

ルクスは、ウルズに答えない。
でも彼が名前を呼ぶ度に彼を強く優しく抱きしめた。


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