…忘れもしないあの日。

後の伝説ではこう語られる。
鋼鉄の機械巨人達…そして、大地の守護神。
彼らは地上にはびこる悪魔達と勇敢に戦い彼らを地底へ追い返すことに成功した。
最後の戦いはし烈を極め…機械巨人達も力尽き、その骸はゾラの大地に散り…青く輝く石となった…と。

神話や伝説には色々と俗説や、段々大きくなっていくものだ
けれどこの伝説は殆ど間違ってはいない。

異形の者達と呼ばれる、地底からの侵略者達は確かに僕らが撃退したのだから。
しかし僕らも、人間も、生物も、この星も多大な被害を受けた。
僕の兄弟の殆んどが、散りとなり、青い輝く石となった。


それは、伝説に残るほどのとても激しい戦いだった。
血まみれの戦場、空虚な感傷、虚ろな空間、心無い壊れた玩具
その戦いで残ったものはそれだけだった。

本当は、もう何が激しかったのか、何が壊れたのか、何が、痛かったのか
そんなものは覚えていないんだ。

この時の事を思い出すと、いつもただ虚しくなるだけ

もう何も感じなくなってしまった




地下勢力が本気になった。
もうそれは今の僕らでは、太刀打ちできるはずもなく僕の兄弟達は一人、一人と倒れていった。
そして人間達の心は、関係は崩れた。

いや…崩れたのは、僕も…だったね…


地下勢力との戦いが激しくなり、揺り篭は限界だった。
もう次襲われれば終わり…そんな状態だ

そんな中、僕は地下勢力が一時撤退したのを見計らい揺り篭へ戻ってきていた。
だけど、クレイドルはいつもと違っていた。
何が違うのか、最初は分からなかった。

でも、やっぱり何かが、違う

それはやがて、予感から、胸騒ぎに変わった。
何が不安なのか、何が怖いのか、分からないけど僕は走った。
ただただ、急いで彼女の元へ…

でも…
いつもの場所に彼女は居なくて。

「ルクス…どこだ…?ルクス?!」

彼は思わず声を出して彼女を呼んだ。
いつもここで、自分の帰りを待っていてくれる女性を。

ウルズは気がついた。
クレイドルの様子全体がおかしい事に。

ゼンガーも、イーグレット・フェフも、ソフィアの気配すら見当たらない。

一体何故…?

ウルズは、科学者達が最も集まっている事の多いメインコンピュータルームへ足を走らせる。
胸騒ぎは収まらなかった。いや、本当は気づいていたのかもしれない。
でも、信じたくなかっただけなのかもしれない。

匂いがした。
生臭い。何の匂いだろう

そして、直ぐ近くの角を曲がった瞬間だった。
そこは一面がいつもと違う景色だった。

何が違うのかって?
真っ赤なんだよ、いや、真っ赤ではなかったかな。
濁った赤だった。

そこに横たわるモノも目に入ったよ。
肌色と、赤と、黒だった。


「!!」

ウルズは急いでその場に横たわる女性に声をかける
でも、反応は返ってはこない。
彼女の横には、映像が流れていた。
誰がこの映像を流したのかはわからない
それはルクスが『あの男』に撃たれる瞬間だった。

そんな映像を見ながら、何度も何度も声をかける。


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