状況は変わらなかった。
もう2週間くらいだろうか。
そんな状況で、最近僕の創造主が研究室から出てくるようになった。
何の研究をしていたのかは誰にも明かさず、
ソフィアにメイガスの事とマシンセルことを訊ね部屋に戻る。それを繰り返していた。

ある日、ルクスとフェフが会話をしているのを目撃した。
どうやら誰かが彼に何かを言ったのだろう。
アンサズもスリサズも、ソフィアの手伝いに付きっ切りだったから恐らく量産型のチルドレンだろう。

「ルクス博士。ウルズに何かを吹き込んでいるそうだな」

「いえ、そんな事は…」

「お前は確か、ウルズの実用調整前も同じような事をしていたな」

「…それは…」

「確か、ウルズには感情があるだの、生きているだの、道具ではないだのと
訳の分からぬ事を言っていたな?今回も同じ内容か?」

「その意見は今でも変わっていません」

「相変わらずだな。しかし、俺の意見も変わらん。
1号も2号も、マシンナリー・チルドレンは人形であり道具だ。俺の為のな」


ウルズはそんな会話を聞いて、胸を押さえた。
そして徐々に大きくなる、ノイズに頭を抱える。

そのノイズはやがて声になった。

−ぼくは どうして うまれたの?
−ぼくは なんのために ここにいるの?

幼かった頃の、あの頃の自分の声が頭を体を駆け巡る

痛むのは何処だろう
脳?頭?体?胸?

−僕はただの道具。ただの駒。
ブロンゾ28号って人の遺伝子によって生まれた

そうだ…
僕は駒なんだ。
道具なんだ。

どこかの優秀な人間の遺伝子によって、
彼の野望を遂行する為だけに生まれた、人形なんだ。


−こんな思いをするなら生まれたくはなかった。
作って欲しいなんて頼んでない。

ああ、そうだ。
頼んでない。
生まれたくなかった。

−ねぇ…?
誰でも良い、教えて。
僕は…ここに生きている意味あるの…?

生きている…意味…?
なんだ、それは…?
僕のここに生きている意味…?

そんな思いや、思考、声が、頭を響く、巡る。
苦しくて、痛くて、辛くて叫びそうになる。

誰か、助けて。
そんなことを一瞬思った。

そうしたら声が響いた。
とても温かくて、優しくて、まるで春みたいで
土砂降りの雨の後の優しい蒼い空みたいな…そんな温かさ。

『私は、あなたのこと、大、大、だーい好きよ』

とても眩しい光だ。
ソレは僕には直視できないくらいの。
とても綺麗で、触れたらすぐ汚れてしまいそうな程の

『ほら、笑って、ウルズ?可愛いお顔が台無しよ』

−ルクス…?

間違いない。
この声は、この優しい光は彼女だ。

彼女は僕に…?
道具で、駒で、人形でしかない僕に光を…?


彼は思い出した。
あの時の確かな決意を。
彼女の涙を見た時のあの、幼い少年が固く心に誓った決意を。



もう決して…この人は泣かせない。

僕に笑顔を教えてくれたこの人はもう二度と…

悲しませない


そして少年はある言葉を口にした。

『ありがとう…、ルクス』


Memoriola lux END

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