何人の敵が、何人の兄弟が落ちただろう。
何も分からないほど、戦いは激しかった。

そんな戦いは一時の間休息を迎えた。
一旦敵が退いたのを見計らい僕らはアースクレイドルへ戻ってきた。

アースクレイドルでは、ソフィアが今後の為にと、スーパーコンピューターメイガスの改良
ゼンガーが、常にモニターを監視し敵に備え、
ルクスがコールドスリープの装置の調整、アースクレイドルの設備の管理を僕らが。
そしてフェフは自分の研究室に篭りきりになった。

常にアースクレイドルは緊迫しており、
人間達は精神的疲労とと肉体的疲労を隠せなくなってきていた。

「よし…これなら、暫くメンテなしでも大丈夫よ」

ルクスがそう言って機械から手を離した。
それをウルズが近くで見つめる。

「はい、ウルズ。新しい装置の設定と操作を教えるからこっちにいらっしゃい」

そう言う彼女の近くに来て、ルクスの説明を記憶するウルズ。
そんな女性の横顔をじっと見つめる、人形は彼女のそばに居る事が多くなっていた。

「わかった?」

「はい」

そう答えるととても嬉しそうに笑い、ウルズの頭を優しく撫でるルクス。
そんな彼女に彼は、とても懐かしいものを感じずにはいられなかった。

彼女と共に居る時にはやはりノイズを感じる事が多々あるが
そんな物さえも、彼には心地の良いものになっていた。

ノイズを感じれば、彼は直ぐに彼女に尋ねた。
聞けば彼女は直ぐに教えてくれた。

前に感じたノイズ、映像は
昔遊んだ、お絵かきや積み木だった。

次に見たのは、ルクスが教えてくれた人の言葉だった。
その次は、世界の事。
その次は、楽しい事。辛い事。


でも次は…
教えてくれなかった。


何度聞いても、訊ねても。
彼女は頑なに拒んだ。決して口を開かなかった。


地下帝国との戦いは、続いた。
彼らもこちらの戦力を危険視しているのか、まだ全力ではないようでこちらにもまだ余裕があった。
しかしこちらの戦力は自分達の身を守る為のもので、それほど多くはない
少しずつ削られていくこちらの戦力と、体力。
人間達も、僕らも分かっていた。あちらが本気になれば簡単に潰される。
ルクスを含めた人間達が徐々に限界に近づいていた。

「ルクス…。大丈夫かい?」

椅子に腰掛ける女性の顔を見て少年はそう言った。

「うん、大丈夫よ、ウルズ」

優しい笑顔だった。
でも分かる、必死に疲れた表情を隠しているのが。
彼女はいつもそうだ。
何があっても、ニコニコしていた。

彼には最近それがわかってきた。
これが彼女の本当の姿なのだと。

いつも思い出すのは彼女が冬眠に入る前の会話だ。
あの時のとても寂しそうな表情、声。
冬眠から目覚めた時の、あの儚げな表情、声。

こんな優しい笑顔を絶やさないこの女性が、
あんな表情を僕の為にしていたと思うと、胸が激しく痛んだ。

そしてどこからともなく聞こえる声があった。


−もう泣かないで
−もう僕のために泣かないで。

いつだろう。
なんだろう。
どうしてこんな声が聞こえるんだろう


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