「…地底からの侵攻…ですか?」

ソフィアがウルズにそう確認する。

「はい。まだ完全とは言えませんが
地球の環境が良くなったのを見計らったようです」

そう報告すると心配そうな顔をするソフィアだった。
そんな彼女を見たウルズは言う

「いかがしますか?」

「彼らは…今、何をしているのですか?」

そう訊ねるソフィアに、後ろで控えていたアンサズが外の映像を流した。
それは地下帝国が、環境を自分達の住みやすい世界に変えている場面と
ようやく生まれてきた動物や、やっと戻ってきてくれた人間を惨殺する映像だった。

その映像に思わず顔を背けるソフィア
スリサズがメイガスにデータを解析させる。

「…アースクレイドルの存在がやつらに知られる時間は約数時間後だそうですが?」

そのスリサズの言葉にウルズが付け加えた。

「…彼らの本拠地は地底にあるようですので、彼らが本気になれば
地底に身を隠すアースクレイドルを見つけるのは容易いかと思われます」

ウルズの言葉を聴いてソフィアは、モニターに流れる映像に目を移す。

「…ウルズ、もし私達が彼らと戦った場合の勝率は…?」

その質問にウルズは答える。

「データが少な過ぎます。このデータだけで解析すれば未知数です」

ソフィアは、その返答に唇をかみ締めた。
映像には、惨殺される子供、生物、作り地球が替えられる絶えず流れる。

苦渋の選択だった
全てのマシンナリー・チルドレンを投入したところで勝てる保障もない。
そして目の前に居る、少年すらも死ぬ可能性は十分にあるのだ。

生き残る為の施設で…
生き延びる為に選んだこの場所で眠ったソフィア。
しかし今彼女達には死が迫っていた。

この数百、数千年、何の為に眠ったのだ?
もしここで少しでも抵抗しなければその時間、全て無駄になる。

なら…どんな手段でも良い。
抵抗しなければ…。ここに眠っている全ての人の為に

そのソフィアの指示を黙って聞いている男2人
一人はゼンガー・ゾンボルト。
そしてもう1人はイーグレット・フェフだ。

「…イーグレット博士、マシンナリー・チルドレン使用しますが…宜しいですね?」

「ああ。ここで死ぬわけにはいかんからな」

そう答えるフェフ。
その返答を聞いたソフィアは次はウルズに指示を出した。

「ウルズ…
全マシンナリー・チルドレンと、
アースクレイドルの全戦力を使い彼らを倒してください」

ソフィアの声は震えていた。
そんなソフィアにウルズは表情一つ変えずに即答をする。

「お任せ下さい」

そうして、後ろに控える2人に指示を出し退出していく。
フェフはそんな様子を確認し、チルドレン達が乗るヒュッケバインの最終調整の為退出していった。
そしてその場に残されたゼンガーとソフィア。

「少佐…少佐は…」

行かないで。

そう言おうと思った。
しかしその言葉は、今退出した彼を思えば言う事は出来なかった。

あの子は死んでしまうかもしれない。

なのに、自分の思い人には 『行かないで』『死なないで』『戦わないで』
そんな都合の良い言葉言えるはずもなくて。

分かっている。
あの子は戦う為に、人に使役される為の人形だ。

けれど…あの眩しい笑顔…
もう何千年も前の事なのに、昨日のように思い出せるあの笑顔は…

涙を必死に堪えた。
堪えたつもり…だった。

でも溢れ出す、沢山の涙は止める事はできなくて。


「…ネート博士」

誰よりも安心できる声がする。
ソフィアは顔を上げた。

「あなたは必ず、俺がお守りします」

力強かった。でも凄く優しい声だった。
ソフィアの瞳にまた大量の涙が溢れる。

声にならない。何か言わなければいけないのに。

そんなソフィアを見て敬礼した彼は、愛機グルンガスト参式の元へ向かった。



忘却の彼方 END

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