雨は好きじゃない。
総てを洗い流してくれる清流だけれども。
水色の髪の少女は雨に打たれながらずっと湿っている地面に俯かせていた。
止んでくれないだろうか。
この雨は嫌いだ。
冷たくて、何かが冷え切りそうな。
頭に何か違和感を感じた。
「…?」
頭を触ると、布があった。
「これ…」
『ずっと濡れてると体に良くない』
「でもあなたが…」
濡れてしまう。
紅い髪をした君。
『最近雨ばっかだな』
「ええ。嫌になっちゃう」
『…目、閉じてごらん』
「え…?」
『早く、ほら』
「あ…はい」
仕方なく目をそっと閉じる。
声が鳴る。
『"蚩尤山海"(シユウサンカイ)』
何だろう。
肌で感じるこの日だまりのような温かさ…。
つい目を開けてしまった。
「は…晴れてる…!」
まさかこんな…神じゃあるまいし…!
さっきまであんなにも降っていたのに…!
『雲、ないね』
「まさかあなたが…!」
『どうでしょ?』
「ありがとう」
『…まあな。アンタ、悲しそうなカオしてたし…』
「これ、返すわ」
『お、すまんな』
「「六」か…」
『好きなんだ、この数字。安心するから』
「へえ…」
『今見た事は忘れろよ』
「知ってる」
『これは…秘密だぞ?』
「それも承知してる。でもいつか会える気がする」
『奇遇だな。俺もだよ』
Without rain
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