ある晴れた日の午後

「ねぇ、リズナ。
 あたし良い事思いついちゃった。」

「・・・何?アスミ。また良からぬ事考えてるの?」
あの時のような悪い笑顔に、思わず背筋が冷える。

それを見てたワカバも苦笑いを浮かべる。

「大丈夫!そんな悪い事じゃないから。」
とアスミは笑顔で言うが、どこか信用できない・・・・。


「だってあんな事があったからさ。ちゃんと一緒に遊びたいんだ・・・。」

「たまには良い事言うのね、・・・アスミ。」
と言う言葉は言わないでおくことにした。


それに、あたしも同じ気持ちだった。




私と同じ位の「力」を秘めてる子に、
会える事はほとんど無いから。

だから、仲良くなりたいと思った。

「さぁ〜て、そうと決まれば早速行動開始よ!」
アスミが嬉しそうに言う。

「でもさぁ・・・誘うのは良いとして、任務とかと被ってたらどうすんだよ。俺らはまだいいとして・・・。」
ケンタがもっともな意見を言う。

「確かにそうですね・・・。アスミさん
 その時はどうするのです?」
ワカバも不安そうに言う。

「て言うか、そこ考えてから行動に移しなさいよ・・・。」
とどめと思えるあたしのこの呟き。

「なに冷めてるのよ、リズナがあたしの次に、乗り気だったじゃない。」

それを言われるとぐうの音も出ない。

「はいはい、分かってます。」
いまのアスミにはなに言っても
聞かないから諦めよう。


とりあえず、あたしが行く事にした。

・・・・アスミが行くと周りに
誤解を招きそうだったから。

「あ、リズナさん!」

「エリ、久しぶり。」
相変わらず明るい笑顔を向ける
エスリン。

「あのさ・・・いきなりで悪いんだけど、明日非番?」

「え・・・明日?・・・確かパトロールが入ってた気が・・・。」
あたしがそう聞くとエスリンは顎に
手を当てて、考えるようなしぐさをした後、はっとした顔をしながらそう言った。

「そっか・・・。」
まぁ、先に任務が入っていたのなら
仕方ない。

皆の元に戻ろうとした時、後ろから聞きなれた声がした。

「あらん?リズちゃんじゃないどうしたの?」

「エクセレンさんこそ、どうしたんですか?」
エスリンが不思議そうに声を上げる。

「え、ああ。リズちゃん、エリちゃんに用があったんじゃないの?」

「え?ああ・・・良いですよ、気にしなくて。」
エクセレンさんに言われて、とっさに
「何でもない」と言ってしまった。

「そんな事ないでしょ?リズちゃん。
エリちゃん、明日のパトロールの
シフト、あたしとラミアちゃんでやっておくから、貸し1つね。」
エクセレンがエスリンに向かってウインクしながらそう言った。

「あと、ボスにもちゃんと話はつけておくから、遠慮しないで行きなさいな。」

それを聞いたエスリンが寂しそうなと言うより、悲しそうな声を上げる。

「すいません・・・。本当は私がちゃんとしないといけないのに。」

「そんな事言いっこ無しよ。と言うより
エリちゃん、もう少し私や皆を頼ったら?」
エクセレンはエスリンの頭に手を置きながらそう言う。

「ごめんね。なんか無理させたみたいで・・・。」

「ううん、私の事は良いよ。それより
リズナさん達の予定は大丈夫なの?」
首をかしげながら尋ねるエスリン。

「うん、大丈夫。・・・またアスミが言いだしたんだけどね。」
リズナはそう言うと、発案者の顔を思いだし、苦笑いする。

「でも・・・アスミさん、本当に良い人なんですね」
そう言ってエスリンは微笑む。

まぁ、そうとも言える。
何だかんだ言って、良い人間だし・・・。

本人に言ったら調子に乗りそうだけど・・・。

「何処へ行くとか、予定とかは決めてあるの?」
エスリンはまた尋ねる。

「いや・・・・アスミのその場のテンションで決まりそう。」

そういってまた溜息をつく私。

「ううん、そんなに気を遣わなくて良いよ。
それに、予定通りにいかないのって普通じゃない?。」

そうけろっと言いのけるエスリン

ああ・・・そう言えばエクセレンさん
が同じ様なテンションだったかな・・。


・・・それで慣れたかな?

「遅いわね〜エリ」

アスミが不安そうに言う。

「仕方ないですよ・・・。遅れてしまうのは。それにまだ時間はありますから。もう少し待ちましょう。」

ワカバがなだめる様に言う

「ごめん・・遅れちゃったね。」
気まずそうに言いながら現われた
エリ

「いいよ、そんな事。それよりなんか
服違う感じするけど、どうしたの?」
あたしが指摘するとエスリンは苦笑いを浮かべる。

確かにいつもの羽織などの基本的な所は
変りないが、所々デザインが違っている。

「ああ・・・これ?エクセ姉さんにスペア見つかって・・・「こっちの方が可愛い」って押し切られて・・・それで」


((スペア・・・って。))

あたしとワカバが多分こう突っ込んでる
であろう・・・。

「え?そうかな・・・。そっちの方が可愛いって。それに髪も下ろしたんだ。似合ってるよ」
アスミは寧ろ嬉しそうに言う。

「よ〜し、エリが遅れてロスした分、テキパキ行くわよ〜!」

相変わらずテンションが高いわね
アスミ・・・。



まぁ、それが長所であって短所でも
あるんだけど・・・。

「・・・」

「ん・・・?エリ、どうしたの?
浮かない顔して。」
あたしがそう尋ねる。

「ううん・・・・。何でもないよ。
さ、早く行こう、リズナ!」
あたしとしてはどうも腑に落ちなかった
けど、先を急ぐことにした。

「て、言うかエリ・・・。」

「ん?どうしたの、アスミ。」
唐突にエスリンに質問を振るアスミ。

「どうしてずっと隠してたの?
そっちの方が絶対に似合うって。」

どうやらまだこだわってるらしい・・・。

「あはは・・・ほら、この服結構動きにくくて・・・。あ、ケーキ屋あるよ?行ってみる?」

「あ、良いね〜。行こう!」
エスリンはアスミの質問に苦笑いを浮かべながら答える。
何気に話題を逸らしたが、アスミはころっと騙されてる。

「ワカバさん・・・リズナさん、付き合ってもらって構いませんか?」
エスリンは不安そうにあたしとワカバに尋ねる。

「ええ、私は構いません。それに私も見てみたかったんです。」

「あたしも良いよ。」

ワカバとあたしは笑顔で返事をする。

「よ〜し、じゃあ決まりね!」

「ごめんね、皆・・・。」

どこか気を使ってるエスリン。

そう言いながらお店に向かう。

「そう言えば、エリ・・・。
結構凄いわね・・・。」

「ええ、ケーキ1ホール綺麗に完食
ですもの・・・。」

お店を後にした後、ワカバとあたしが
目をパチクリさせながらそう言う。

「で、そっちの方は?」
アスミが不思議そうに エスリンに尋ねる。

「えっと・・・これは、
エクセ姉さんのです。」
エスリンは笑顔でこたえる。

「アスミさん、リズナさん、ワカバさん
今日は本当に有難う・・。」
エスリンの言葉にあたし達は思わず
面食らう。

「いきなりどうしたの? エリ」
その理由をあたしが尋ねる。

「・・・・こうやって、年の近い友達と
買い物したりするの初めてだったから・・・。」
そう言う エスリンの表情は本当に寂しそうだった。

「な〜に、過去形にしてるの?
これからもさ、時々行こうよ!勿論皆で、ね?
もう友達でしょ?
まぁ・・・エリの方が歳上だけどさ。」

「そうですよ。・・・そんな悲しい事、言わないでください。」
アスミが怒ったような、ワカバも寂しそうに笑いながら言う。

「エリ・・・・前にも言ったけどさ、一人じゃないんだよ。皆がいるじゃない、ね?」

エリに、昔のあたしを見てる様な
気がした。



あの時エリにシンパシーに
似た感じを持ったのは力だけじゃなかったんだ・・・。




だからこそ、言えるんだ・・・。


一人じゃないんだって


エスリンも私も・・・。


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