ここ最近不思議な感じがする…。
日向みたいに暖かい感じ……。
それをあたしだけじゃなく、ワカバも感じるらしい。
今まで出会った事のない人なのかな・・・?
「あらん、リズナちゃん。どうしたの?変な顔して・・・。」
「あ、エクセレン・・・。何でも無いよ。大丈夫だから。」
そう言って、心配そうに尋ねるけれど、笑って見せた。エクセレンが言ってたって事は、あたし相当変な顔してたのかも・・・と内心焦った。
すると、後ろからあたしを呼ぶ声がした。
「なんか気になったからリズナの未来を、一応、占ってみたのよ。
それで出たのが、“女教皇に太陽”。意味は『未来に対する啓示・英知と理性』と『よい巡り合い』だって……。」
「でも、アスミのタロット占いってあまり信用ならないからね・・。」
あたしがため息をつきながら言うと、ワカバも乾いた笑いを洩らした後、「まぁ、あまり当たらないだけでしょう?」
「ワカバの言う通りよ〜!全く当たらないって訳じゃないでしょ?」
あの感じが誰なのだろうか・・・、そんな事を考えながら廊下を歩いていた時に誰かにぶつかって尻もちをついてしまった。
「いたた・・・。」
思わずお尻を擦っているあたしに
「ごめんなさい・・・!大丈夫ですか・・・?」
ぶつかったであろう少女が心配そうに声を掛ける。
その子に目を向けてみる。水色の様な色の髪を肩より少し伸びた所で切りそろえた、女の子でもはっとしそうな面立ちの子だった。
もっとも、今は心配そうな顔だけど。
横髪を束ねて前で垂らして、アンテナの様に上の髪が立っていて、白い袖の無い羽織に青い短いスカート、黒いロングブーツを身に付けてる。
膝立ちで、あたしの方を見ている。
「うん、平気。あたしの方こそごめんね。」
苦笑いを浮かべてそう答えると、その子はぱっと顔を明るくして
「良かった・・・。今さらだけど・・名前教えてくれないですか?私はエスリン。あなたは?」
エメラルドの様な瞳で、あたしに尋ねて来る。
「あたしの名前はリズナ。こっちこそ宜しくね、エスリン。」
この子の笑顔を見ると、自然にあたしも笑ってた。
こんな簡単な自己紹介をしてたら
「あれ、リズナ・・・どうしたの。
こんな所で・・・。」
「リズナさん・・・。どうかなさったんですか?」
後ろから聞きなれた、ワカバとアスミの声が響く。
「リズナさん。そちらの方達は?」
エスリンは、不思議そうな声を上げる。
勿論当然だ。自分の知らない人間が2人増えたのだから。
「ああ、あたしの友達兼チームメイトかな?金色の髪で少し煩いのがアスミで、こっちの茶色の髪で優しそうなのがワカバよ。」
あたしが簡単に2人を紹介する。
「初めまして、エスリンです。アスミさんにワカバさん、よろしくお願いします。」
そう言ってエスリンは軽く頭を下げる。
「ねぇエスリン、敬語とかいらないわよ。なんだか他人行儀であまり好きじゃないのよね。」
アスミが不満そうに言う。
「あ、ごめんね?アスミ・・・。私のは昔から教育されたものだから・・・自然と出るの。」
エスリンは苦笑いをしながらアスミに答える。
でも、心なしか淋しそうに見えるその笑顔。
「昔からと仰いましたが、何か事情がおありなんですか?」
ワカバが不思議そうにエスリンに尋ねる。
「・・・分かりやすく説明しますと、貴女と同じ様な環境に置かれてる、と言ったら分かりやすいですか?」
エスリンが言う。一瞬、何かを『感じた』
「エスリンさん。貴女は・・・!」
ワカバがはっとしながら声を上げる。
「・・・!すみません。あの私。少し失礼しますね。」
そう言うとエスリンは何処かへと消えて行った。
「一体どうしたのかな?」状況が分からず、アスミが不思議そうに言う。
「・・・リズナさん、感じましたか?」
「うん、感じた。」
ワカバがあたしに尋ねると確信を持って頷く。
「あたしとワカバの感じた『感じ』。そして、アスミがタロット占いで見たのは、きっとあの人・・・エスリンと思う。」
あたしがそう言うと、アスミは
「えっ、嘘?!・・・・確かに感じの良い人だったから、良い巡り合わせは当たってるとしても、未来に対する啓示の説明はどうなのよ?」
「あの人その気になれば、未来が見れると思う・・・。でも、まだちゃんと覚醒してないから、不意におぼろ気に見えるとは思うんだけど・・・。」
「そうですね。私もあの人からそんな気を感じました・・・ただ」
「ただ?」
「悲しい目をしてる気がするんです・・・。」
私がハガネの廊下を歩いていると、
「アラド君・・ゼオラどうしたの?」
ばったり2人と出会った。
「あ・・エスリン少尉。いや・・実は・・俺、腹へ「なっ・・・エスリン少尉、何でも無いんですよ・・!」
ゼオラがアラドの口を塞ぎ、慌ててアラドの言葉に被せる様に苦笑いを浮かべながら声を上げる。
「じゃあ2人共、少しの間だけここで待っててくれる?」
その言葉にアラド・ゼオラの2人はきょとんとするが、
「あ・・はい。」
「分かりました・・・。」
数分後エスリンは手に袋を持って来た。
「エスリン少尉・・・それは?」
「あ、これ?。良かったら小腹の足しになったらな〜と思って持って来たんだけど・・・。」
「お気持ちは嬉しいんですが・・いいんですか・・・?」
微笑みを浮かべるエスリンとは反対に、ゼオラは不安そうな顔つきである。
「あ、大丈夫よ!カビとかは生えてないから。」
エスリンはゼオラを安心させる様にそう言った。
「すんません・・・じゃあ頂きます〜!」
「はい、どうぞ。」
アラドは顔の前で両手を合わせると、嬉しそうに言うと、エスリンもまた嬉しそうに返す。
「あらん、エリちゃん、もしかしてそれ作ったの?」
「あ、エクセ姉様にラミア姉様。どうしたんです?」
エスリンに声を掛けたのが、自分の知った人、エクセレンとラミアであった。
「いえ、何でもないのですわ。そこを通りかかっただけですのよ。」
「んふふ〜ラミアちゃんの言う通り、そうなのですわよん。」
と、ラミアはいたって普通に返しているが
エクセレンは面白そうに返す。
「じゃあ、姉様達もいかがです?」
エスリンは柔らかく笑いながら、2人の方に向く。
「あら〜良いの!?じゃあ頂くわよん。」
「頂きますですわ・・・といかんな。」
エクセレンは嬉しそうにラミアもまた軽く笑いながら手を付ける。
「あ、リズナさん、アスミさんにワカバさん。」
「・・あ!エスリン。どうしたの、この状況・・・。」
この状況に冷静に驚きと疑問が混ざった声を上げるリズナ。
「リズナ達も食べてみたらどうだ?上手いぜ、これ。」
「アラド!少しは遠慮しなさいよ!さっきお昼3杯もお代わりしたくせに!それに、クッキー口に入れながら喋らないの!」
嬉しそうに声を上げるアラドにゼオラは怒りの声を上げる。
「まぁまぁゼオラさん、そんなに怒らないで上げてくださいな。 エスリンさん、お1つ頂けます?」
ワカバはそんなゼオラをなだめると エスリンの方を向く。
「はい、大丈夫です。リズナさんやアスミさんもどうです?」
ワカバの質問に答えると、2人の方へと向く。
「良いの?じゃ貰おっかな〜。」
「じゃあ・・頂きます。」
アスミは嬉しそうに、リズナは恐る恐る口に運ぶ。
「どうですか・・・?」
「うん、美味しいわ〜! エリちゃん、将来良いお嫁さんになれるわよ〜。」
「そ・・そんな事///」
エクセレンの一言に エスリンは真っ赤になる
(ハガネは今日も平和です)
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